刹那と永遠

むちゃくちゃ久しぶりにこっちのブログを更新するわけですが、2月28日に吉井和哉さんのソロワークスでの歌詞を集めた詩集が発売されましたね皆さん。めでたいめでたい。私はといえば芝居の遠征にかこつけて池袋のポップアップストアの初日に足を運んで詩集もゲットしてきました。なんでも今ポップアップストアは東京も大阪も肝心の詩集が売り切れとるらしいじゃないですか!グッズが売り切れるとかならわかるけど本体って売り切れること…あるんだ!?(そらあるだろ)

さて、久しぶりにブログを書こうと思ったのは、詩集をつらつら読ませていただいて、今回は吉井さんのコメントがついているやつもあるので、ふむふむ~と思いつつ、楽しく拝読させていただいていたんですが、とある歌詞につけられた吉井さんのコメントに、わーーーーーー!!!!!!って、すっげーーーーーーーーーって、めちゃ興奮したんですよね。いやまじで本当このひとのこういう視点、ものの見方、一生私が得られないところだなって思った。

こういうときその場でSNSに衝動的に書いてしまいたくなるんですけど、正式な発売日より前に手に入れた、しかもみんなそれぞれのタイミングで読みたいであろうそのコメントの詳細を、SNSで即座に消費するのはさすがに他の人の楽しみを奪いすぎてんじゃねーかと思い、思ったんだけれど、でもあまりにもゆっさゆっさに心がふるえたので、そのことはどうしても書いて残しておきたい病が発動しちゃったっていう、そのせめぎあいの折衷案がこのブログです。

それは「Island」につけられたコメントです。

引用してしまっていいものか悩むが、このフレーズだけどうしても引用したい。

「しかしその日がくるまでは、これからも崇高な神と日常のゴミのことを同時に歌いたいと思っている。」

私がすごく好きな戯曲に、ソーントン・ワイルダーの「わが町」というのがあって、その「わが町」について「とても大きなものととても小さなものを同時に扱うと、そこに「詩」が生まれます」と評した人がいるんだけど、まさに、まさにだと思いませんか。あまりにもクリティカルなコメントすぎて、そりゃ私がこの人のことを永遠に好きなわけだよと思い知らされちゃったなって。

吉井和哉の歌詞の世界が独特で、唯一無二で、すくなくとも私にとってはどんな曲のどんな一行も安い言葉で書かれていない歌詞ばかりで、どうしてこんなに好きなのか、その理由を考えたことがなかったわけじゃないけど、でもこのコメントはあまりにも私のツボにぐっさりと刺さりまくってしまいました。神とゴミのことを同時に歌いたい。やばいなほんと。好き。もう、好きしかない(語彙力どこ行った)。

そのほかにも、あの曲にあるうっすらとした死のにおいにはそういうわけがあったのか、とか、ぜったい無理なのにムキムキマンになろうとしてたとか、あと「真面目に生きていたときの歌詞が強い」ってコメントもなるほどと思ったり、なんつーか、掘り下げ甲斐がある詩集だなあと思います。

自分で読んでいると、1stや2ndのときの歌詞は、あの頃の吉井和哉の濃縮還元という感じで、表現したい欲が噴き出ているように思えるけれど、それは実は逆で、1st2ndの頃に飢えていた、「吉井和哉」に飢えていた私の思いが乗っかっているから、そんなふうに感じるのかもしれないなって思いました。

今読んでいて新たに良さに気がつく歌詞もある一方で、最初からすごく好きだったし、今読んでも本当に素晴らしいなと思う歌詞もあるわけで、BELIEVEとかは間違いなくそのうちのひとつ。「離れてもそばにいても変わらない想いがある 人は皆星になる そのわけはその時わかる」…。ハーーーー。ため息しか出んのよ。

詩集とともに発売された缶バッジやアクキーのグッズもなかなかシンプルで美しく、歌詞のアクキーって…けっこうイイ!と盛り上がっています。むちゃくちゃかぶりまくってるんですけどね!(血涙)

ともあれ、このタイミングで出された吉井和哉の集大成のひとつ、タイトルも装丁もシンプルで、だがそこが良い!折に触れぱらぱらとめくってまた新たな発見をしたいなって思っています。最後になりましたが吉井和哉さんソロデビュー20周年&詩集発売おめでとうございます!!!これからも末永くよろしくお願いしたいの心よ!

Debut 30th Anniversary THE YELLOW MONKEY SUPER FAN PARTY 1228 @日本武道館に行ってきたのよ

思えば今年の年明けに吉井ちゃんのソロツアーが休止(からの中止)になって、そこから2022年はじっくりどーんと構えつつ、ドロップされるもろもろの30周年記念映像を楽しみつつみたいな1年でしたね。今年の12月28日どうすんのかな、ライヴはまあ無理として、かといってもう12月28日に普通に働けない身体になっちゃってるからわし…と思っているところへ、今回の企画のご案内がきたと。1228だけは死守するマン。ありがたいですね。

思いのほかチケットが激戦で(当てて下さったお友達に感謝~!)、それもそのはずというか展示会場が武道館のアリーナだからアリーナ分の客席ない、映像見せるから北はおろか北東北西のチケットも売れない、でそりゃ激戦もむべなるかなってやつです。


展示&映像ってメカラウロコ15のEXIBITIONスタイルやないか~!ウッ頭が…ってなりつつも、あのときの経験から言ってもぜってー展示は混むじゃん、並ぶじゃん、うーん…ま、いっか!つってハナから展示を捨てた勢。スタンドの客席から眺めてて、おっメカラ9のアレックスのコートあるじゃん~!とかね、電飾のあるステージにあがってる皆さんが国旗をステージから眺めてるところとかね、それはそれでなんかほんのりいい時間でした。あと今回の「おみやげ」めっちゃ良くない!?正直これをグッズで売ってほしかったよ!でもってタオルのほうをおみやげにすればよかったのでは感!!


なんとなく30周年のほうに気を取られてて、30年の総まとめ的な映像なのかなって思ってたんですけど、1228特化の1228輪切り映像集だったんですね。ここまで1228押してくるから、最後の告知で今まで出てない再集結後の1228映像集のリリースとかあんのかなって思ったけど全然違いましたね。



わりとメンバーのインタビューもしっかりあって、1228コレクションとして贅沢な時間だったなーと思います。1995年の12月28日もツアーでこの日に武道館でやってるんですよって前振りがちゃんとあったりしてね。こうして定点観測で見ると、1本のライヴだけを通して観るのとはまた違う部分が見えてきたりするのもおもしろい。ちなみに吉井さんソロの1228映像はBOXにまとめられてるからみんな買ってね!(ダイマ


しかし、その中でも燦然と輝くメカラ7のパワーよ。エンドロールでメンバーも7の話をしちゃってましたけど、これだけの本数を重ねてなお1228にまつわる記憶として、最高のライヴとしてトップオブトップに君臨してるし、メンバー自身も「あの頃のおれたちなんだったんだろう」って言うぐらい、本当に「ゾーン」に入ってた時季だったんだろうなあって。


開演前にお友達と、事前に公式がやってた1228の楽曲アンケート、メカラ7何入れたでしょう~か!っていうウザイクイズをやったらお友達が「フリージア」って一発で当ててきて、そしたらインタビューでもアニーがメカラ7のフリージアチョイスしてていやまじで…それな!?アニー、それな!?って打ちすぎて痛い、膝が。最後の無音で遠ざかっていくパフォーマンスを激賛してたのも高ポイント。でもって、改めて見るメカラ7の神カメラワークね…!「17歳で」あたりからもう一瞬たりとも捨てショットなし、みたいな画面構成。神すぎる。親の顔より見たフリージアを武道館の大画面で見るの、なんだか不思議な感じでした。


メカラ9のマリーさんはねえ、これは選ばれるでしょうなって気がしてました。そういえばマリーさんの衣装も展示されてたね。流れたやつはメカラBOXのじゃなくてDVD特典映像のほうだったかな(編集がちがうんですよ、これ豆な)。ペチの公演のWEDDING DRESS流れたのもうれしかった!ヒーセの衣装こんなんだったけ!とかいろいろ新鮮だったけど、吉井にむちゃいかず後家をいじられたのはそうだそうだそうだった!って記憶が甦ってくるのが不思議。吉井がコメントで、解散後に10を観た時違う自分がいるような感じつってたけど、確かにな~と思う。あの10の頃の吉井の、ちょっとやけっぱちというか、背水の陣みたいな佇まいはちょっと特異かもしんないね。


再集結以後だけでも、もう2016、2017、2018、2019、2020と12月28日を通過してきたわけで、もうこれだけで立派なBOXになるのでは?どうですか?(誰に言ってるの?)そのうちの2本は福岡と名古屋という東京外での開催なのもちょっと面白い。どっちもむちゃくちゃ楽しかった思い出が積みに積まれているので、もちろん武道館でってのも得難いんですけど、こういうパターンもありだよねって思います。最後にみんなで言ってたように将来的には北海道…とか…?冬の北海道、過酷が過ぎると思うけど、もし北海道になったらわたし、3日前ぐらいから前乗りするね!


30年にわたる12月28日にフォーカスした輪切り映像集だから、メンバーの変遷が(衣装、顔、雰囲気)如実に出てしまうと思うんだけど、なんかねえ、バンドとして見たらほんとうに驚くほど変わらない。みんな派手で、派手なことを愛してて、デコラティブで、ふざけてて、かと思えばしぬほどドラマティックで、この振り幅をちょっと時代錯誤で金ぴかで花柄のロックンロールが彩っている、そのまんま。歳を重ねていても、ぜんぜん老けてない。まさに老いてますます盛んでございますな4人の空気こそがすべてだよなあと2時間の映像を見ている間しみじみと感じ入りました。



最後の2曲が2020年の日本武道館でやったアバンギャルドとASIANなんですけど、実はね、1996年12月28日のメカラウロコ7から、この2020年12月28日まで、ASIANとアバンギャルドは12月28日皆勤賞なんでございます!特にアバンギャルドはもう、その前のツアーで一切お見かけしなくても、12月28日には必ずやってくれてるんですよ。この曲のことをかつて吉井が「バンドが幸福な時代にあることを思い出させる曲」って言ってたことを思うと、胸もいっぱいになろうってもんです。



途中のコメントで吉井がメカラのことを「そっかそっか、FINALってゆっちゃったんだ」とか言っててクソほど笑いましたし、終わってもまた始めればいいからねっていうのも笑いました。ファンももう「知ってた案件」って顔してるさそりゃ。でも終わってもまた始めればいいってすごくらしいよなっておもう。そういう、その時その時の自分たちに正直なバンドだっていうのがすごくよくでてるとおもう。そういうバンドのことを私は大好きだなっておもいます。


映像の最後はみんなが本当に一番待ってた「未来の約束」で、ほんとうにありがたい、ありがたいし、もうこの武道館を一歩出たところから徳を、徳を積まねば…!と今から運を引き寄せることしか考えられませんが何か。ともあれ、どんな形でも12月28日を大事にしてくれたこと、うれしかったです。もう吉井さんのソロも含めて、16年?17年?近く、12月28日に1年のピークが来る生活を続けているので、私にとって12月29日はもはやお正月、そんな感じです。ほんと、これをやらないと、年は越せないよね~ってそのまんまです。メンバーの皆さんもどうかくれぐれもお体には気をつけて、来る2023年12月28日へのカウントダウンは、もうはじまっております!すばらしい1年になりますように!

THE YELLOW MONKEY SPRING TOUR“NAKED”Completed set list「BLASTED VOLUME!……BE READY」@IMPホールに行ってきたのよ

長えタイトルだな!ちなみに、フラゲはできてません!(先に言う)

とりあえず具体的な感想に入る前に、明日11日発売のSPRING TOUR NAKED、お高いボックスの方はまあコレクターアイテム的な色合いもあるのでお好みで、ですけど、単体の円盤のほうだけでも買って損なしかなと思います。というのも、既発のVHS(DVD)はインタビューやオフショットが相当インサートされているだけでなく、収録の曲順もセトリ通りではなくバラバラなので、編集の持つ意味合いが仕事をしすぎているきらいがある。黒箱の特典DVDはその点ではあの雰囲気を伝える一助にはなるけれど、いかんせん数曲の切り取りなので。とりあえず当日のセトリは以下の通りですが、赤字が既発DVD収録、青字が黒箱特典収録になります。黒字は今回初収録。

01.楽園
02.FINE FINE FINE
03.サイキックNo.9
04.I LOVE YOU BABY

05.VERMILION HANDS
06.SECOND CRY
07.A HENな飴玉
08.薔薇娼婦麗奈
09.HEART BREAK
10.DEAR FEELING
11.創生児

12.SPARK
13.聖なる海とサンシャイン

14.ROCK STAR
15.SHOCK HEARTS
16.甘い経験
17.バラ色の日々
18.悲しきASIAN BOY

ENCORE
01.WELCOME TO MY DOGHOUSE
02.SUCK OF LIFE
03.JAM

いやFINE FINE FINEに麗奈にWELCOMEて…ROCK STARて…これを倉庫に眠らせておくつもりだったのかい?末代まで罰が当たるよ?(ガチ勢こわい)

この日の横アリのライヴは私も参加していて、ヒーセ側のね、けっこう前方の席でした。ちょうどGWごろっていうタイミングもなんか、いろいろ思い出しましたね。しかし、私が何に食らったかってど頭の開演前のSEですよ…開演前のSEってほんと、ものすごい喚起力がある。あれはやばかった。

それで20数年ぶりにSPRING TOURをまるっと再体験したわけですけど、結局のところ、ステージに載っているものがすべてだったっていう、パンドラを見た時と同じような感情が沸き起こりました。リリースされたときに感じたバックステージのみんなの硬い表情、奥歯にもののはさまったようなインタビュー、後年語られた「あのとき、実は」なエピソードの数々に記憶が塗り替えられていたような気持ちになっていたけれど、なにをどうひっくり返ってもこのバンドの「カッコよさ」、そこにすべてをかけるような佇まいはちっとも曇ってなんかいないのだった。

とはいえ、それこそSICKSのときのような、まさに全知全能といった恐れ知らずの輝きを放っていたかというとそうではなかったのは事実なんですよね。でも、もがいているからこその、ある種やけっぱちというか、火事場のなんとかというか、そういった奥底から出てくる色気というのは確実にある。必死になってる人間ってやっぱり愛しいし、もがいている人間だからこそ放つことができる光ってやっぱりあるんだ。

あとね、改めて思ったけど、本当に一つのステージにおける物語、文脈にものを言わせるバンドだなと。ライヴでの曲間の繋ぎに以上にこだわる吉井の面目躍如でもあったし、本当にただ曲を並べているというのではなくて、その流れにドラマがあって、それがその日のライヴにおいて生まれていくドラマと重なってっていう、いやー何度も言うけど、こんなドラマティックなバンド、どうして愛さずにいられようか。事前にyoutubeにアップされた「甘い経験」のライヴ映像が上映前にまるっと流れて、その時は「これどうせ後でも見るのになあ~」とぼんやり見ていた私だが、本編のあの位置に配置された「甘い経験」は「さっきと同じ映像!?」というぐらい、持っている意味が違って見えたのがちょっと衝撃でしたね。

個人的にはやっぱり初出しのFINE FINE FINEやVERMILIONにはあがってしまったなー!そうだった麗奈もやってくれたんだった、これレコ発ツアーじゃなかったから、ちょっとメカラっぽいセトリだったんだよなーなんてことも思い出したりして。どのライヴ映像を見ても、全員がもれなくゴージャス、もれなくカッコいい、まじでえらいうちのバンド、と思うのを止められない病気なわけですが、全体的に挑みかかるような視線でゴリッゴリにベースを鳴らしていたヒーセに撃ち抜かれっぱなしでした。そうかと思えば逆サイドでエマがキラキラのギラギラ衣装にほわほわ笑顔でオスみあふれるプレイをしていたりして、要素!多い!ってなるし、吉井は吉井で一線超えたような顔つきでぐいぐいくるし、アニーはアニー。映像で見ているのにいつ上着を脱いだか気がつかないやつでごめん。マジで目がいくつあっても足りんなというのを20年前も思ってたけど今また思ってます。

創生児はこのライヴの白眉といってもいいぐらいの出来なんじゃないですかね。吉井がキレッキレだったし左右の風神雷神のやらずぶったくりぷり炸裂してるし、これは金を払う価値のある映像…って拝みそうになりました。あとWELCOMEね!!!!犬小屋、ほんとうにえらい。いつ何時でもこのバンドのカッコよさ指数の最長不倒叩き出してくる。犬小屋てだけで持ち点に倍率ドン更に倍って感じだもの。

バラ色のときに、「君たちと俺たちのテーマソングになったらいい」って吉井が言ってて、そうかあ、この頃から言ってたのかあ、こういう吉井の嗅覚おそるべしだよな、実際にその通りになったわけだしね。

爆音で音を浴び続けるっていうのも久しぶりで、でもちゃんと聞き取れて快適でさすがですねって思ってたら、音響卓に宗さんがいらしてたんですってね。マジかよー!宗さーん!お懐かしうございますー!

冒頭にメンバー4人のコメントが流れて、吉井のやつが重すぎて「これ読んでから見るの!?地獄かよ」ってなったけど、エマのコメントがさすがの中和剤でほんと、いつもありがとうございます。解散の手紙もそうだったけど、エマのおかげで命が繋がってます。でもまあ、そういうのもふっ飛ばしちゃうんだよね、結局のところ。あのステージでの彼ら、あのグラマラスさ、持っているドラマ、それらの真ん中にどんとあるカッコよさが、なにもかもを吹き飛ばす。吹き飛ばして、ステージのこちら側にいる私たちを連れていく。遠くへ。今までに見たことのない世界、届いたことのない場所へ。

そういうのって、結局のところ変わらない。こうしてシンプルにあの時を、SPRING TOURを振り返ることができるようになったのも、紐解けば今があるからだし、ほんとうに時間が経つにつれて失ったと思ったものが還ってくることってあるんだなと思います。

しかしこれが20年以上前とは!こんなに古びていないってちょっとした奇跡だ。パッケージされた映像のなかに、あの頃の時代を感じさせるような、時代と寝たような要素がどこにもないから、「きのうの映像です」って言われても通るんじゃないかというぐらい、「今」感がある。たとえば時間が巻き戻って、もう一度彼らに出会い直したとしても、もう一度夢中になるだろうな、と改めて思う。そういうバンドを好きになれてよかったです。心の最前列で眺め直したいライヴ映像がまたひとつ増えたこと、文字通り、ファン冥利につきる想いです。

青春の光と影

ジョニ・ミッチェルにあらず。

デビュー30周年記念リリースの一環というか、ずいぶん前に告知もされていた有賀幹夫さんの手によるパンチドランカーツアーの写真集が無事発売されました。やんややんや。

何度もここで書いているように、私はこのパンチドランカーのツアーに魂のかけらをとられてしまった人間なので、届いた写真集を1枚1枚、懐かしい旧友と再会するかのように味わいました。巻末にどのライヴでの写真かインデックスをつけてくださってるの、ちょうありがたい。宣材や解散のときのパネル展で拝見したものもあれば、もちろん初見のものもたくさんあり、なにより、どこをどう切り取っても最高にカッコいい。そういえば、「パンドラ」の映画のときにもそう思ったな。いろいろと考えすぎてしまったけど、結局のところ、ただひたすらカッコよくて、カッコよすぎて、どんな感傷よりもそのカッコよさの速度がはやすぎて、それしか考えられない。この写真集を見ても、同じことを思いました。

映画の「パンドラ」を監督してくださった高橋栄樹さんが、我らのエイキーがテキストを寄せてくれていて、それがとてもよかった。ある種の陰りだけでこのツアーをくくられるのはあまりにも惜しいということ、このツアーの音源を再生して、その完成度に驚いたこと、それがたまたま選んだ1公演だけでなく、どの公演の音源もその完成度が崩れることなく続いていくこと。本当にそうだった、と思う。私は自分が参加したライヴ、特に長崎でのホールライヴは、自分にとってはっきりとエポックなものだったと思っているけれど、何よりあの当時感じ入ったのは、それがこの日だけの特別なものでは決してなく、彼らは一見淡々ともいえる佇まいでいながら、いつもいつもこの爆発的なエネルギーを照射し続けていたということで、だからこそ、あの1年間、113本のツアーをめぐる我々の熱狂、狂乱、そういったものが倍掛けで加速していったのだろうと思うのだ。

まるで鬼っ子のように扱われた(何しろ『懲役』とか言われてますから)(根に持つ)ツアーではあったけれど、でもあの時代の、あの過酷さを乗り越えたことが、今の彼らを支えているんじゃないかと思うことがよくある。あれを乗り越えられたのだから、あのタフさを持てたことがあったのだから、そういう記憶は長じて自分を底から支えたりするものだ。そうだったらいいなという私の願望も勿論あるが、でもこの写真集の発売に寄せられたメンバーのコメントを見ると、あながち的外れでもないのではないかという気がする。再集結後に演奏された「パンチドランカー」の曲前で、我々の勲章、と言葉を重ねてくれたことも、それを裏付けているような気がする。

あのツアーにまつわるすべて、いいこともわるいこともぜんぶ、懐かしく切なく思い出されます。本当に青春だった。なによりも、全身全霊をかけて熱狂したこと、熱狂できたことを、あの頃の自分によくやったと言ってあげたい気持ちです。

写真集の最後の1枚は3.10のあの最後の写真だ。一緒に写真を撮りましょう、吉井がそう声をかけて、みんなが大きく大きく手を伸ばしたあの写真。いっときは遺影のようと喩えられても、時間が経てば同じ写真でも違う風景が見えてくるものなのだなと改めて思う。そういう意味でも、こうして20年以上の時を経て、またあの頃の写真たちと、青春の光と影と、再会できる機会をもらえたことは嬉しいことでした。私の魂のかけらは、やっぱりあの時間のなかに、まだ閉じ込められているような気がするし、それは決して悪いことではないということを、この写真集にまたひとつ教えてもらえたような気がしています。

THE SILENT VISION TOUR 2021@日本武道館に行ってきたのよ

2015年ぶりの吉井ソロ武道館だそうです。2018年にソロ15周年のツアーもあったし、そんな気してなかったけど、今回のツアーも武道館まではZEPPメインだしで、アリーナクラスでソロライヴやるのマジでむちゃくちゃ久しぶりだったんですね。それこそ2015年12月28日以来だ。

しかしそういうのも、あとで振り返ってそういえばそうだったね、と気がつくくらいで、見ている間はまったくそういうことを感じさせなかったですね。アリーナis俺の庭、日本武道館もっと俺の庭みたいな、やりこんでる、ここに馴染んでる空気がありました。そういう馴染んじゃう空気を避けてたようなところが昔は少なからずあったような気がするけど、年を重ねてそう悪いものでもないと思うようになったのでしょうか。

セットリストはアンコールにファナカンが加わっただけで、これまでのツアーのセットリストを踏襲。大阪で見た時の感想にも書いたけれど、今までセットリストの中核をなしていた「おなじみの曲」を前半はほぼ外してきていて、それが曲の良さの再発見につながっているっていうのがすごい。Biriとかほんと、レコ発のツアーの時には全然意識してなかった曲だけど、むちゃくちゃ楽しいし踊れるしエロさと決意表明が背中合わせの絶妙な歌詞だし、正直ずーっと頭の中回っちゃってますもん。

1階席で、ステージ真横あたりの位置から見ていて、今回は左右の花道でもあまり近づかないようにしてたようだったし、中継見て初めて「どうした前髪~!」ってなりましたよね。しかもファナカンのときだけモニタに映って、そこで「けっこうしっかりメイクしてるやん…!?」となり、メイクしてるのになぜ目を隠す…?お前のそういうところがわからないよ…?となってもしょうがないと思う。つーかなんだかんだやってるうちにその重め前髪は乱れておでこが出てくるんだから、もう最初からあきらめておでこ出しちゃいなさい!と言いたい私だ。

途中のMCで「いろいろと(客層も)入れ替わってると思うからここで主旨とルールを説明します」とか言い出して、「そもそもなんで12月28日かっていうと…」から始まったので、そっからかい!と全力のサイレント裏拳ツッコミが出ました。いやでもこの日の観客、「クランベリー」の途中のブレイクのところでもビタイチ拍手が起こらなかったのをみて、よく訓練されてる客しか来てねえ…と思ったんだよね。そういう意味では主旨とルールは叩き込まれてるオーディエンスばっかりだったのではないでしょうか(笑)

高音にちょっと苦労してるような部分もあったけど、それならそれでなんとか打開策をやりながら見つけていく、という腰の据わったパフォーマンスで、高め安定だなーと思いながら見ていました。吉井ちゃんを見て高め安定だなという感慨を抱く日がこようとは!席位置から袖にいるスタッフも良く見えたんですけど、吉井のMCにスタッフがすげえウケてて、いい雰囲気だったなー。点描のタンバリントスはこれ以上ないぐらいベスト角度で拝ませていただきました。

当然ながら観客の歓声ご法度だったので、コール&レスポンスも合いの手もなしでしたが、去年のTHE YELLOW MONKEYのライヴでもそうだったけど、それを意に介さない(ように見える)形でどんどん新しい形に馴染んでいこうとするのがすごいし、ビルマニアのお約束シンガロングのところも、ただ自分が普通に歌うんじゃなくて観客の手拍子でシンガロングの代わりにするとことか、マジで客前での反射神経が尋常じゃないなと。

このセトリの中でもいちばんやりこんでいるであろうファナカンの歌詞が相当グダグダだったの笑ったんですが、その中のMCで来年の話に触れ、「ソロかも」「猿かも」と気を持たせる話をしながらも、ソロだろうが!猿だろうが!俺はここにいるんだ!と宣言したのがある意味この日のひとつのハイライトだったなーと思います。思い返せば2006年12月28日、「きめた!12月28日は毎年おれがここでやる。吉井武道館にする、ここを!」と宣言してから(このMCを記憶に刻みすぎて諳んじているおれだ)、15年経って可能性を広げたうえでの再宣言ですもんね。うれしい話だし、ありがたい話だよ。

ここまでくると人さまが何をどう思おうがマジで関係ないしあんまりそれに触れないようにしようと思ってますけど、「ソロがある」でも「バンドがある」でも、「ある」ことを嘆く人の気持ち、いっちょん理解できん、「ない」ことを嘆くならともかく、ソロも猿も存在していて、どちらにも可能性があるのに何を悲嘆にくれることがあるのかねっていう。本当に「ない」時期を過ごしたからこそ言わせてもらうよこれは。

大阪のライヴの感想でも書いたけれど、今回のツアーのセットリストはわりと攻めの楽曲が多いので、だからこそラストの「みらいのうた」がむちゃくちゃ響く構成になってるとおもう。自分の自叙伝のような…というコメントを思えば思うほどこの曲のなんてことない歌詞がすごく刺さる。彼がそういうつもりで、自分の人生のつもりで歌ってるとおもうと、よけい刺さる。

人間いつなにがどうなってしまうかわからないし、世界もいつなにがどうなってしまうかわからないってことをこの2年間でいやというほど思い知らされたわけだけど、だからこそ少しでも長く12月28日にここでまた会えたらいいなあと思わないではいられない。それがソロでも猿でもそう思う。その日まで社会的にも物理的にも生き残って、またここでお互いの確認が出来たらいいと思う。改めて、ずっとここにいる、と宣言してくれたこと、とてもうれしいことばでした。2021年どうもありがとう、2022年もどうかよろしく。吉井和哉さまへ、あなたのファンより。

THE SILENT VISION TOUR 2021@Zepp Osaka Baysideに行ってきたのよ

ツアー3か所目!個人的に初ベイサイド。なるほど確かになんもねえ!ユニバは近いけど!スタンディングライヴはもうマジで足腰がしぬんでございます、な年齢ですが、今回は椅子ありZEPPなので老体にとてもやさしかった。むちゃくちゃ後ろの席でしたが、後ろ過ぎて視界は良好だった(段差があるため)。

まったくセットリストを知らず、かつ予想もぜんぜんつかないまま(新曲はやるだろうという予想とも言えない予想ぐらい)だったので、いやーーーいろいろビックリしたし面白かった。ぜんぜん知らないままでいたいな!って方はなのでこの先はまだ見ない方がいいかもだ。

吉井ちゃんお召し物は黒革のジャケット、ドレッシーなシャツも黒、パンツも黒とこんなに黒で固めてるのにまったく地味じゃないのがすごい。なんで?本人が光り輝いてるから?(ええようにゆうた)

しょっぱなに新曲の「〇か×」もってきたのも、あんまり吉井ちゃんに無いパターンだなー!と驚いたのに、そのあとに続くのが無音db、Biri、そんでフロリダときたのでひえ~~とひっくり返りそうになってしまった。どれもこれも久しぶりすぎる。いや、バンドの活動があったから…とかそういうことじゃなくて、ソロの楽曲における定番というか定石というか、そういうのを一歩も二歩も外してるんですよ。いわゆるやりこんでない曲たちばかり。フロリダとかマジで…いつぶりなんよっていう。

ライヴの後半ではさすがにお馴染みのセトリがいくつか並んだが、前半はもう、驚きの連続、ワンダーの釣瓶打ち、さすがに知らない曲はないけど寄る年波で咄嗟にタイトル出てこねえ~!となる曲もあったほど。しかし吉井ちゃんの曲はたいてい歌詞にタイトルが入っているのでご老体に優しいよね。

しかし久しぶりでも勝手に身体が反応するのは自分でも面白かった。踊りながら頭の中で吉井ちゃんのディスコグラフィーがザザザザザとめくれていくような感覚だったなー。

こうなると、このセットリストをどういう基準でチョイスしたのか気になるところだけど、どこか一貫性はあるような気はしてて、なんというか、内省的な色合いの濃い楽曲よりも攻撃に転じたような勢いのある楽曲が多い気がする。歌詞もそういう意味のこもったものが多いというか。しかも、ナポリタンズに真壁さんが加わって、かつ久しぶりのツアーでまだちょっとバタバタしているようなところもある中、吉井の「誰ひとり置いてかない」とでもいわんばかりのぐいぐい引っ張る力が最初から最後まで一貫してて、むちゃくちゃ頼もしかったし、過去に手の内に入った曲ばかりじゃなくても、絶対モノにできる、というような高め安定のパフォーマンスが見られたことになんかちょっと感動さえしてしまった私だ。

Biriなんて、あんな浮かれパーティーチューンに見えて、こんなに肚の据わった決意表明楽曲でしたっけ?って自分でも驚きだった。観客から声は返ってこなくても、「君もすきじゃん」のとき、あいつ絶対いい顔してたにきまってる。あと個人的に前半の白眉はSIDE BY SIDEで、ありがとうございます、途中でお手本のようなジャケットプレイ、ありがとうございます。右肩はずして引っ掛けてうずくまって歌って立ち上がりざまターンして左肩を落とす。完ぺきでございます。しかもそのあとボウタイをゆるめて袖のボタンはずすとこまでやってくれた…とんだサービス過剰だぜ…いいぞもっとやれ…。いや、それはさておいても(置くな)、SIDE BY SIDE改めて名曲。最後「無理に笑うのよせ」のとこ、いつ何時でも最高。

黄金バット当て振り大好き吉井ちゃんが炸裂してたし、RAINBOW!クランベリー!なつい!!ともうイントロのたびに心の中できゃいきゃいはしゃいじゃいましたね。シュレッダーで思わずホッとしたもん。そうそう、これこれ、聴きなれた味…って感じで。しかし、今日のセトリの中でも1,2を争うほどにやりこんでいるはずのシュレッダーと点描がいちばん歌詞がふわっふわだったのはどういうことだってばよ(笑)

後半戦だよーと言われて始まったのがロックンロールのメソッド、MUSIC、点描のしくみ、Hattrick'n(!!!)、PHOENIXビルマニアっていやマジで踊らすやん。吉井の過去のソロのライヴと比べても相当に踊らすやん。ロックンロールのメソッドってこんなカッコいい曲だったっけ?あと…Hattrick'nってこんなに!!!!かっこいい!!!曲だったっけ!!??いやもう後半の白眉はこれよ。ど派手な照明の中でマイクスタンド従えて立つ吉井のシルエットのガンギマリさったらない。いやマジで…こんなにかっこいい曲だったっけ!!??(2回言った)

アンコールはドラムのキックの効いたアレンジのWINNER、でもってWEEKENDER。いつものコール&レスポンスのところで、吉井が「こころで!」って煽ったのがすごく、よかった。あの瞬間なんか、聞こえない声が聴こえるような気がしたよね。観ている観客としては、歓声がないのは物足りなくないのかな、とか心配しそうになるけれど、吉井はこういうところで本当にタフというか…観客の生きている反応を力に変えるってことに天賦の才があるんだなと思い知らされます。絶対にやられっぱなしじゃ終わらねーぞ、というか…そう、今回のライヴにはそういう、吉井のなにくそ精神が形となって現れたようなところがあるなとおもう。

最後は「みらいのうた」。この日はMCらしいMCはほとんどなかったけど、この曲の前のときはわりとしっかりと言葉にしていたように思う。

自分の半生をまとめたといったら変だけど、難しくない、簡単なことばで曲をつくった。あえて外部のアレンジにおまかせして、自分は詞と曲を提供して、あとは歌うだけ。
ぼくにとっての歌は、これがあれば生きていけるというか、これがないと、ちょっとやばいぞ、となるようなもので、勿論ここにいる皆さんにとっても歌は大事なものだろうと思うけど、僕にとっての「歌」にあたるものが、きっと皆さんそれぞれにもあるんじゃないかと思う。その皆さんにとっての「歌」を、思いながら聴いてもらえるとうれしいです。

そういう言葉に続いて聴く「みらいのうた」は、ほんとうに、どんな薬よりも日々の疲れやいろんなものでひび割れた心に沁みた。ただ機械を通して聴いたときとはちがう、全部の歌詞の意味が沁みとおるようだった。これが自分の半生だ、という言葉のあとに響く「この場所のここからたまらなく好きだよ」、「いつかすべてが変わるなら今日もただ耐えよう」、そして「いつかここから消えるなら 今日もただ歌おう」。君と僕を繋ぐメロディになるなら、こわくはない、みらいのうた…。涙があふれた。

今回のセットリストでは、バラードらしいバラード、メロウな楽曲は最後の「みらいのうた」だけで、静かな演奏に、ほんとうに歌の力だけに何かを賭けている、と感じさせる圧巻のパフォーマンス、いやもう見事な構成すぎたし、これをやってのける吉井和哉というひとよ…おまえの、そういうとこやぞ!そういうとこが、好きなんやぞ!

最後はバンドメンバーの退場を先に促して、吉井がひとり残り、大きく手を振って、オフマイクでひとこと叫んで、笑って去っていった。いい顔してたよ。たぶん。きっと。

懐かしく、久しぶりに聴く曲もたくさんあったからか、何度か、ホント私の人生、この人とこの人の楽曲に沢山助けてもらってきたな…としみじみしてしまう瞬間がけっこうあって、どうも、あの時助けていただいた亀ですじゃないけど、恩返しもできないけど、相変わらず飽きないし、好きだし、これからもたぶんそうなんだろうなって思います。バンドがいない頃は、どこか足りないものを探すような、そうした残像を引きずるような感傷がどこかにあったけど、それがなくなっても、やっぱり吉井和哉はわたしにとって驚きに満ち溢れたひとなんだなあとしみじみ思う夜でした。むしろシンプルに「かっこよさ」に磨きをかけてきつつるんじゃないかという気がして、相変わらず衰えない吉井和哉のカッコよさの速度を堪能できた夜でもありました。

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UTANOVA Billboard Live OSAKAに行ってきたのよ

お邪魔したのは2日目の2ndステージです。発表になった時は、大阪は過去のUTANOVAシリーズも公演がなかったし、そんな飢えに飢えたところにビルボードなんてあーた、そんな狭き門をあーた、殺生ですぜあーた、と思っていたのですが、当ててもらえました。ありがとうございます。ありがとうございます。

1週間前に座席の表示があったけどいや…なるほどわからん!という感じであまりよく見てなかった。ら、当日受付でアリーナの最前列のお席ですよと言われてそうなん!?と急にビビり倒した俺。よかった…コロナ禍でもう化粧という化粧から遠ざかるだけの生活だったけど今日は一応してきたわ…よかった…と思うほどには近い。いや近い。近いのよ!

ビルボード大阪お邪魔するの初めてで、いろいろ検索してみたところ食事はマストというわけでもないようだということで今回はドリンクのみオーダーしました。もちろんアルコールは全面提供禁止でございます。開演前のアナウンスでバーコード決済か事前会計をおすすめされていたので(帰りの混雑緩和のため)、開演前にもう会計すませておきました。いや始まったら食べる(飲む)どころじゃないだろうし。

ぜんぜん何も頼んでない方もいれば、フードをオーダーしてる人も結構いた感じ。総じてみなさん、マナーが良かったですよ。カウンター席の方とか、一蘭か!?というぐらい黙々とされてらした。もちろん話し声がないわけじゃないけど、劇場ロビーの方がぜんぜんうるさい。アハハハ。

上手にギター真壁さん、下手にピアノ鶴ちゃん。吉井が登場して、いやーまじか…むちゃくちゃよく見えるな…ジャケットの袖の金ボタンの数まで数えられるぜ…(なにしとん)と思わずどうでもいいことを考えてしまうほどに至近距離でしたね。すごいな、この距離で見てもマジであいつ、顔が…顔がいい!20年以上追いかけてきて今また新鮮に心の底から感じ入ってしまうほどに!

20GO、VSで幕開け。20GOはなんか、そうそう、吉井和哉のソロ、これこれ、という肌馴染み感ありますね。しかしむちゃくちゃ声が出てたな。声が放たれて空気が揺れて反響してそれを肌で感じてみたいな、具体的な音圧が見えるようなパワフルボイスでした。

VSのとき、手拍子をそのまま続けるのかどうしようか客席も一瞬逡巡した感じがあったりとか、序盤は探り探りみたいなとこもあったりしたけど、やってる方は横浜4ステ大阪3ステ終えてるので、どんどん行くよー!みたいなテンションが最初からあったのが心強かったな。今日の吉井ちゃんとバンドの皆さんはぐいぐい引っ張っていってくれるタイプの佇まいだった。

聖なる海とサンシャイン、楽器のパートは少ないけど、真壁さんの自由自在な音色でそれを感じさせないのがさすがだったし、あとグランドピアノ、むっちゃいい仕事すんなー!と思いました。やっぱり曲の雰囲気がガラッと変わる。そんでこのグランドピアノに負けないボーカル力よ。むちゃくちゃ気持ちよさそうだったなー。恋の花はもちろんオリジナルバージョンだよ!

告白すると、もうせっかくの機会だしと思ってマジでまじまじとご尊顔を注視していたわけですが、なんかずーっと「マジで、こいつ、顔がいい」っていうのと、「歌うっま!歌うっま!」ということしか考えていなかったような気がする。あと高音を張る時にぐっと鼻のところに力が入って皺がよるのとか、むちゃくちゃセクシーですよね…と思ったり、ギターを持つ手を見て「これが…あの…(どの)」と思ったり、なんかすいませんねこんな感想で…。

しかし、こんな至近距離で、しかも客も着席したままで、でもなんか、最初からドーンとオーディエンスを受け止めてる感じがすごかったし、ズバッと正面見てパワフルに歌ってる姿を見ると、かつて決まってオープニングにサングラスをしないではいられなかったことや、スタンディングのライヴでマイクスタンドにしがみつくように歌って微動だにしなかったことや、そういう過去の吉井和哉ではもう、ないんだなっていうのがね、なんかしみじみと思い出されたりしましたね。

この日のライヴの白眉といっていいのはおそらくLife On Marsだったとおもう。このUTANOVAシリーズではソロの曲とかバンドの曲とか、カバーもやらせてもらったりしてるけど、今回はデヴィッド・ボウイのこの曲を、ぼくがこういうふうになろうとおもったきっかけの曲で、同時に大失恋したときの曲で、ずっとラヴソングだと思ってたけど、歌詞をよく見たらそういうわけでもなくて…。英語がへただからね、いつも洋楽のカバーをするときは勝手な訳詞をつけて歌ってるんだけど、でも、うん、この曲は英語のまま歌いたいとおもいます。つまりぼくはこれから歌詞をガン見しながら歌うけど!そういう素人みたいなところは見ないで、どうか皆さん目を閉じて(無理←私の心の声)聴いてください。

歌に入る前にぐっと姿勢を正して、ジャケットとシャツの襟をそっと直して、そうして歌い始めた場面に私はほんとうにしてやられてしまって、こういうところ、こういうところにそのひとのほんとうの人間がでるよな、と思ったりしたのだった。

歌詞をガン見しますなんて冗談めいて言ってはいたけど、たぶんもう血肉になり果てているんだろうなと思わせるLife On Marsだった。ある瞬間から一気にギアがトップに入って、そこからはもう、ただただ素晴らしいのひと言だった。ボウイに対する愛と敬意、楽曲に対する愛と敬意、自分をここまで連れてきたものへの愛と敬意がぞんぶんにこめられた時間で、それを味わわせてもらえることに心から感動した。それを支える真壁さんと鶴谷さんのプレイも素晴らしかったです。曲のラスト、吉井が大きく手を振ってまるで指揮者のようだったのも、ふたりをふり仰いでいた顔が最高にいい笑顔だったのも含めて、忘れられない瞬間でした。

その余韻も冷めやらぬなかで「ピリオドの雨」とかちょっと、切り替え、気持ちの切り替えが!まさかこのビルボードでピリオドの雨が聞けるとは…「もういちど もういちど 君は演じるんだね」の吉井のセクシーさよ…いやこれ、この脳内の記憶をどうにか円盤にできませんか…?っていうほど、このねっとりとした、どこか爛れた愛の歌を存分に浴びて、いやもう神様、十分でございます…!と天を仰ぐ気持ちに。

Kinki Kidsに提供した「薔薇と太陽」。曲に入るまえに歌詞の中のva cu vanはあれ、ワインの保存容器のことなんだよーあんまりそういうツッコミ見なかったけどーとなぜ今ここで!?な裏話が。バキュバン(vacu vin)って言うんですって。そして「これ言うとね、みんな絶対「へぇ~」って言っちゃう(笑)」いやまんまと言ったけども!

ビルマニアではタンバリンも登場して、「これがタンバリ~ン!」ってタンバリン紹介してたのかわいすぎてしぬかと思いました。「生涯愛を捧げるあなたを見つけよう」って歌ってたよ。終わった後、ギターを変えてくれるローディーさんに次コレかあ~!みたいな顔したの私は見逃さなかったし、マイクでもちょっと拾って「聞こえた?」つってたのもかわよしでした。なんかすごく暑かったみたいで、「おれきょうびしょびしょだわ」と言いつつやおら胸元のボタンをバババとあけてタオルで拭きだすから目…目のやり場!いや別に困らないが!?みたいな状態だったことを告白しておきます。あれで恥じらうようなら吉井ファンやってません(豪語)。「ジャケット脱げばいいんだけどね、でも本編では脱ぎたくない!っていう意地が…これ着てタンバリン叩きたい!っていう」って言ってて、いやお前のそういうおこだわり、それこそが吉井和哉だよと私は拍手喝采でした。

横浜ではデニムだったけど、大阪ではドレッシーな感じで…どう?似合う?と振って、そんなもん…似合うに決まっとるだろうガァーーーー!!!といわんばかりの盛大な拍手を浴び、ああそう、うーんやっぱり?そうなるか…みたいな顔してしばし感じ入ってらしたのが(もしかしたら東京の衣装どうしよう的なお悩みタイムだったのかもしれないが)、すごく絵になりすぎるわ面白いわでマスクの下で破顔一笑だった私です。

本編最後の曲は血潮。真壁さんのギターすんばらしかったね。吉井ちゃんの声も絶好調で、なんだかわけもなく最後の「さよならいつも怯えていた私」の歌詞がいつも以上にぐっときまくってしまった。

アンコールでは宣言どおりジャケットを脱いでご登場。新曲の「みらいのうた」をここで披露できればよかったんだけど…それは冬にね!ツアーにとっといて、という話から「ちょっと愚痴るよ?」と前置きして、「あのさあ~~、見たよ?年末の武道館。『なんだ吉井和哉か』って」おい!ちょっと!だれ!どこのだれ!うちの和ちゃんそのあたり敏感肌なんだからやめてよね!っていうか普通にワイらに対しても失礼っしょ!と思ったりしましたが、ご本人は「いやそれはさ~~~いろいろあんのよ~~~わかるでしょ~~~?」と楽しげであったのでまあよかった。「今年は吉井和哉です」「12月28日はTHE YELLOW MONKEY吉井和哉で守っていきますんで」。そう言い放った後、会場をぐるりと睥睨したときの顔が、私が「い、い、いい顔してる~~~!!!」と最高に喜ぶキマった顔で、いやマジこれ冗談抜きに寿命、延びたな…?という感じがしました。

アンコールはMY FOOLISH HEART。不思議なことに、イントロを聞いた瞬間から、ぐっと心臓を掴まれるような感覚があって、めちゃくちゃ久しぶりに聴くな…というノスタルジーからだけではなくて、あっわたし、いまこの曲が聴きたかったんだ…というような、全身に音が沁みわたるような気持ちになった。なぜなのかはわからない。かつて吉井和哉はこの楽曲について、ファン投票で1位となったことに驚き「あんな心折れた男の歌を?」と訝しんでいたことがあるが、それこそがこの楽曲のパワーの根源なのではないかとおもう。決して投げ出すものか、逃げ出すものか…と歌いながら、それを誰かを鼓舞するためでなく、自分に向かって投げかける歌だからこそ。この楽曲をリリースした当時のことを思い出したし、私にとってTHE YELLOW MONKEYが人生の恋人なら、吉井和哉は人生の同志だ、いろんなことを分かち合ってきた…と過剰にセンチメンタルになってしまったりもし、気がつけばマスクが涙で濡れていた。替えを持ってきておいてよかった。

途中のMCで、吉井は、ドームでキンキラキンの衣装着てイエーイ!ってやりたい自分と、こういうところが好きな、神経質な自分と両方いんのよ、と笑い、だからこういう場所でも続けてやっていきたい、ビルボードさ~ん!と呼びかけていた。叶うといいね。でも、この人はやるかやらないかって、目の前のコップを掴むかどうかってだけだから、と言い、常に「掴む」という選択をしてきたひとだから、きっとまた新しい夢も実現させるんだろう。

こういう時代になって、へんな言い方だけど…なんだか戦時中みたいな、でもやれることはやっていきたいし、それでもダメだと言われたら中止ってことも当然あり得るし、でもぼくは歌を歌うひとだから、この時代にこういう歌を残したんだってことをやっていきたい、それが繋がっていくならうれしい。この人、こんなにしなやかな人だったんだな。ずっと前からそうだったのかな。でも、こういうときに、自分の愛するアーティストがしなやかな思考をしてくれているというのは、ずいぶんと、それだけでずいぶんと嬉しいことだ、と思いました。

ずっとロックシンガーとしてやっていくんで、そうも言っていた。
声を出せたら、きっとみんなが今日イチの歓声でその言葉を迎えたんじゃないかとおもう。
その歓声の代わりの拍手は、でもきっとちゃんと届いている。
そう思えるライヴでした。
楽しかったです。