THE YELLOW MONKEYライヴ映像・独断と偏見でしか選んでないエポック10【前編】

なんか仰々しいタイトルついてますが早い話自分が好きなライヴ映像ベスト10です。いつかやろうと思っていたけれど、このゴールデンウィーク、マジで!一切!何の予定もないこの5連休、さすがに何か自分にタスクを課さないと本気で5日寝太郎で終わってしまうという恐怖に駆られ手を付けることにしました。エポック10としたのはなぜかというとベストって言っちゃうとなんか違うし、フェイバリットってのも違うし、なんかこう自分にとってこれは忘れがたいなっていうか、いや忘れがたいのは全部なんだが、コンマとかピリオドとかを打ちたくなるような映像をまあ選んでみようじゃないのという趣旨です。

最初は1つの円盤に1曲だけの縛りをかけようかなと思いましたが、そうそうに挫折しましたので、大した縛りはなく、あるとすれば公式に販売された円盤に収録された映像から選ぶというぐらいです。ではいってみよ!まずは前編5曲!順不同です!

ROMANTIST TASTE/「TRUE MIND TOUR‘95-’96 FOR SEASON in motion」収録

間違いなく人生で一番繰り返し見たライヴ映像です。THE YELLOW MONKEYの、今風に言えば「沼」に落ちて、最初に買ったVHSのビデオ。これを買ったのはJAMが収録されていたからなので、そういう意味でもメジャーな楽曲を収録することの大事さを思い知りますね。

ともかく、買ってきたこのVHSを頭から通して見て、お目当てのJAMはもちろん、FOUR SEASONSや空の青と本当の気持ちや、最後に4分割で出てくるSUCKなんかに目を白黒させながら見終わって、わーーかっこよかったな、おもしろかったな…で、終わらなかった。次の日から、何をしてても、このブルーのシャツを着て、サングラスをかけた吉井和哉が、くちびるをゆがめて嗤いながら喉を掻き切るアクションをする吉井和哉が、脳裏から離れない。家に帰って、また見る。うん、うん、かっこいい。でもどれだけ見ても、何度繰り返しても、あの吉井和哉が見たくて、見たくて、何度でもビデオを再生してしまう。その頃の実家の親の悲痛な叫び「またイエローなんちゃら見るの!?」うん、ごめんねお母さん。こんな娘に育ってしまいました。

とまれ、この1曲はあまりにもすべてが好きすぎて、吉井の動きを完コピできるし、これも何度も言っているけれど、「終わらないために君のために」と歌詞を変えて指をさされる客席の女の子に生まれ変わりたい。たぶんそれだけで成仏できるんじゃないかと思います。

TRUE MINDの単体DVD、黒箱DVD BOXがオリジナルですが、TRUE MIND NAKEDはこの日のライヴがまるっと収録されているので、単体では見られないオープニングが、そして吉井ちゃんの「アハ~ン?」が聴けます。曲終わりにはそのまま「ハピーニューイヤー。すいーえーんすいー!」でSweet & Sweetになだれ込めます。お得ですね!(何が)

WELCOME TO MY DOGHOUSE/「メカラ ウロコ・7(完全版DVDBOX)」収録

単体DVDの方には犬小屋入らなかったんですよね。信じられます?なにがどうなってこれが収録曲から落とされることになったわけ?(尺の関係では?)完全版メカラウロコBOXが実現しなかったらこの映像は永久に陽の目を見ることもないままボインマンの倉庫に眠っていたかもしれないわけですよ。なんつーおそろしい話や。

驚くべきことに、この日のWELCOMEはフリージアの少年のアウトロからそのままイントロのドラムに繋がっていて、いつものあのSEと遠吠えから始まるスタイルじゃないのもまたすごい。温度差えぐすぎなんですよ。メカラBOXが発売になって、友人たちと10→9→7の順番で見て、このWELCOME見た時本当、椅子から転げ落ちましたもんね。こんなにすみずみまでカッコイイが行きわたった映像ほかにありますか?しかもそれが今ここに至るまで倉庫に眠っていたとは一体…?(しつこい)間奏で上手と下手の花道にエマとヒーセがゆっくりと歩いていくところ、ピックをくわえてアコギを叩く吉井、もうあのあたりから日本武道館が彼らのものに、4人の手のひらにぎゅーっと吸い込まれていくようで、身震いがするほどです。

華やかに見える道化師の黒い見世物小屋へようこそ、日本のバンドにとってある意味象徴的ともいうべき日本武道館というコヤを、この一曲で一瞬にして「黒い見世物小屋」にしてしまい、「ここから早く出たいよ」の歌詞のまま、このあと彼らはさらに大きな舞台へ挑んでいくわけで、そういう意味でも、THE YELLOW MONKEYの初期衝動が最高の形で結晶した1曲なんじゃないかと思います。

“I”/「ライブ帝国」収録

いやこれが入らないわけないでしょ、だって私が選んでるんだから。って開き直ってどうする。この話ももう何回もしてますね!もともとは1995年12月31日に渋谷公会堂で行われたカウントダウンライブ(LIVE DI;GA)で、ウルフルズハイロウズとの共演でした。THE YELLOW MONKEYにハマった当初、当時放送されたものを録画したVHSを見せてもらったのが最初。この日のライヴの吉井和哉はロビンというより18禁和哉で、まあ全編にわたってエロい(太陽が燃えているの間奏なんかマジですごい。これどんな気持ちでやってたのって今本人に聞いてみたい)。

そんでこの“I”ですよ。いやもちろんこの映像を見る前にも、アルバムも聴いてたし初武道館のVHSも見てたし、これが初見てわけじゃなかった。駄菓子菓子!この日の"I"を見て、初めてズドンときたというか、金切り声で幸せってシチュエーションを飲み込ませるのにこんなに説得力あるパフォーマンスもないというか、もうとにかく、こんなに生きるためのエロスが凝縮された獣のようなひとから、どうやって目を離しておける?いやおけない!っていう、衝撃の楽曲だったんですよ。

ライブ帝国が発売されるまでは、友人にもらった孫コピーどころではない玄孫コピーの映像を後生大事にしていたので、これが収録されると知った時は文字通り飛び上がって喜びました。DVD全体としてもTHE YELLOW MONKEYと縁の深いTVKで放送されたライヴ映像がぎゅっと詰まっていて、お気に入りの一本です。

パンチドランカー/「『9999』初回限定盤DVD」収録

Subjective Late Showツアーの最終日、岡山・倉敷公演のもの。いやー申し訳ない、なんだかんだいってもパンチドランカーの女だよあたしゃ。映像も、盤として発売するためにしっかり録ったものというよりは記録映像的な意味合いが強いのかなって感じだけど、そんなことは気にしません。

ニューアルバムの特典DVDを作ろうってなって、そこに再集結からリリース前までのライヴのベストセレクション映像を集めますってなって、この曲が入る嬉しさ、たとえられない。しかもね!岡山の公演のものを選んでいるっていう、ここですよ。間違いなく過去の「失敗でした」発言踏まえてのあれじゃないですか。この地だからこの曲なのか、この曲だからこの地なのか。いや公言されたわけじゃないですけど、そういうドラマをなおざりにする人たちじゃないんで、これはもう私の中で勝手に決めつけてます。

113本のツアーで当然ながらすべてのライヴのオープニングだった曲で、そういう曲っていちどアルバムから離れるとなかなかセットリストに入らなかったりするし、解散してからは「これをライヴで聴くことはもう二度とない」と思っていたし、再集結となっても、この曲にスポットライトが再び当たるなんて予想もしていなかった。でもね、ほんと、どうですか。再集結した年の秋のツアーだけれど、完全にあの頃の「淡々とすごいものを積み上げていた」佇まいはそのままで、でも間奏でぎゅっと全員が集まる時のグルーヴは間違いなく2016年のもので、大袈裟でなくこれを見ていると「奇跡って、起こるもんだなあ…」と感じ入ってしまいます。あのアニーを挟んで両隣に立つエマとヒーセ、現代の風神雷神というか阿吽の仁王像というか、ともかく完成された美を感じる構図で、何度見ても飽きません。

バラ色の日々/「30th Anniversary THE YELLOW MONKEY SUPER DOME TOUR BOX」収録

最新BOXから1曲選ぼう、と思って選んだわけではなくて、これはもう、選ばざるを得ない、少なくとも2021年5月の今の段階では、これほどエポックな映像はないんじゃないか。そう思います。

バラ色の日々という曲は、今更私が解説するまでもなく、バンドの後期に初の外部プロデューサーを入れて作られたチャレンジシリーズの第1作で、吉井和哉が休み明けにもじゃもじゃのパーマで出てきたという衝撃も強いけど、この外部プロデューサーを入れたってのがね、もうその時点でバンド的には黄信号というか、「音楽性」「新しい風」とか言い出したら大抵そこはもう地獄の三丁目じゃないですか。だからリリース当初から圧倒的にファンに支持されたとか、そういう楽曲では決してなかった。その後バンドを解散し、吉井和哉が初めてソロのステージで演奏したTHE YELLOW MONKEY時代の楽曲がこれで、それが大きな分岐点のひとつだったと思う。そこからの、バンドが不在であった時間にこの曲はどんどん存在感を増していって、今やファンクラブの名称もここからとられるまでになった。

けれど、この2020年11月3日の東京ドームでの「バラ色」は、大袈裟でなく違うフェーズあるというか、もっと大きなものが託されているし、それをファンもメンバーもみんなわかっている、そういう一曲になったと思うんですよね。このその場にいないファンからも歌声を募るSing Loudという企画は他の楽曲でも実施されているわけだけど、歌詞の内容も相俟って、歓声という言ってみればファンとしての手足を縛られても、ウイルスによって出歩く自由を失っても、それでも届け!という一念が現れているのは、このバラ色の日々なんじゃないかと思います。それは奇しくもこの楽曲が、バンドが不在の間にその根を深く伸ばし、幹を太くしていった楽曲であったことと無関係ではないのではないでしょうか。それだけ「託す」ことのできる楽曲だった、それはリリース当初にはわからなかったこの楽曲の持つポテンシャルだったんだと思います。アウトロを奏でる4人がお互いを見る目線のやさしさ、届けられたファンの声に耳を傾ける顔、まさにこのときのTHE YELLOW MONKEYの現在地を示すのに、これほど相応しい一曲はほかにありません。