UTANOVA Billboard Live OSAKAに行ってきたのよ

お邪魔したのは2日目の2ndステージです。発表になった時は、大阪は過去のUTANOVAシリーズも公演がなかったし、そんな飢えに飢えたところにビルボードなんてあーた、そんな狭き門をあーた、殺生ですぜあーた、と思っていたのですが、当ててもらえました。ありがとうございます。ありがとうございます。

1週間前に座席の表示があったけどいや…なるほどわからん!という感じであまりよく見てなかった。ら、当日受付でアリーナの最前列のお席ですよと言われてそうなん!?と急にビビり倒した俺。よかった…コロナ禍でもう化粧という化粧から遠ざかるだけの生活だったけど今日は一応してきたわ…よかった…と思うほどには近い。いや近い。近いのよ!

ビルボード大阪お邪魔するの初めてで、いろいろ検索してみたところ食事はマストというわけでもないようだということで今回はドリンクのみオーダーしました。もちろんアルコールは全面提供禁止でございます。開演前のアナウンスでバーコード決済か事前会計をおすすめされていたので(帰りの混雑緩和のため)、開演前にもう会計すませておきました。いや始まったら食べる(飲む)どころじゃないだろうし。

ぜんぜん何も頼んでない方もいれば、フードをオーダーしてる人も結構いた感じ。総じてみなさん、マナーが良かったですよ。カウンター席の方とか、一蘭か!?というぐらい黙々とされてらした。もちろん話し声がないわけじゃないけど、劇場ロビーの方がぜんぜんうるさい。アハハハ。

上手にギター真壁さん、下手にピアノ鶴ちゃん。吉井が登場して、いやーまじか…むちゃくちゃよく見えるな…ジャケットの袖の金ボタンの数まで数えられるぜ…(なにしとん)と思わずどうでもいいことを考えてしまうほどに至近距離でしたね。すごいな、この距離で見てもマジであいつ、顔が…顔がいい!20年以上追いかけてきて今また新鮮に心の底から感じ入ってしまうほどに!

20GO、VSで幕開け。20GOはなんか、そうそう、吉井和哉のソロ、これこれ、という肌馴染み感ありますね。しかしむちゃくちゃ声が出てたな。声が放たれて空気が揺れて反響してそれを肌で感じてみたいな、具体的な音圧が見えるようなパワフルボイスでした。

VSのとき、手拍子をそのまま続けるのかどうしようか客席も一瞬逡巡した感じがあったりとか、序盤は探り探りみたいなとこもあったりしたけど、やってる方は横浜4ステ大阪3ステ終えてるので、どんどん行くよー!みたいなテンションが最初からあったのが心強かったな。今日の吉井ちゃんとバンドの皆さんはぐいぐい引っ張っていってくれるタイプの佇まいだった。

聖なる海とサンシャイン、楽器のパートは少ないけど、真壁さんの自由自在な音色でそれを感じさせないのがさすがだったし、あとグランドピアノ、むっちゃいい仕事すんなー!と思いました。やっぱり曲の雰囲気がガラッと変わる。そんでこのグランドピアノに負けないボーカル力よ。むちゃくちゃ気持ちよさそうだったなー。恋の花はもちろんオリジナルバージョンだよ!

告白すると、もうせっかくの機会だしと思ってマジでまじまじとご尊顔を注視していたわけですが、なんかずーっと「マジで、こいつ、顔がいい」っていうのと、「歌うっま!歌うっま!」ということしか考えていなかったような気がする。あと高音を張る時にぐっと鼻のところに力が入って皺がよるのとか、むちゃくちゃセクシーですよね…と思ったり、ギターを持つ手を見て「これが…あの…(どの)」と思ったり、なんかすいませんねこんな感想で…。

しかし、こんな至近距離で、しかも客も着席したままで、でもなんか、最初からドーンとオーディエンスを受け止めてる感じがすごかったし、ズバッと正面見てパワフルに歌ってる姿を見ると、かつて決まってオープニングにサングラスをしないではいられなかったことや、スタンディングのライヴでマイクスタンドにしがみつくように歌って微動だにしなかったことや、そういう過去の吉井和哉ではもう、ないんだなっていうのがね、なんかしみじみと思い出されたりしましたね。

この日のライヴの白眉といっていいのはおそらくLife On Marsだったとおもう。このUTANOVAシリーズではソロの曲とかバンドの曲とか、カバーもやらせてもらったりしてるけど、今回はデヴィッド・ボウイのこの曲を、ぼくがこういうふうになろうとおもったきっかけの曲で、同時に大失恋したときの曲で、ずっとラヴソングだと思ってたけど、歌詞をよく見たらそういうわけでもなくて…。英語がへただからね、いつも洋楽のカバーをするときは勝手な訳詞をつけて歌ってるんだけど、でも、うん、この曲は英語のまま歌いたいとおもいます。つまりぼくはこれから歌詞をガン見しながら歌うけど!そういう素人みたいなところは見ないで、どうか皆さん目を閉じて(無理←私の心の声)聴いてください。

歌に入る前にぐっと姿勢を正して、ジャケットとシャツの襟をそっと直して、そうして歌い始めた場面に私はほんとうにしてやられてしまって、こういうところ、こういうところにそのひとのほんとうの人間がでるよな、と思ったりしたのだった。

歌詞をガン見しますなんて冗談めいて言ってはいたけど、たぶんもう血肉になり果てているんだろうなと思わせるLife On Marsだった。ある瞬間から一気にギアがトップに入って、そこからはもう、ただただ素晴らしいのひと言だった。ボウイに対する愛と敬意、楽曲に対する愛と敬意、自分をここまで連れてきたものへの愛と敬意がぞんぶんにこめられた時間で、それを味わわせてもらえることに心から感動した。それを支える真壁さんと鶴谷さんのプレイも素晴らしかったです。曲のラスト、吉井が大きく手を振ってまるで指揮者のようだったのも、ふたりをふり仰いでいた顔が最高にいい笑顔だったのも含めて、忘れられない瞬間でした。

その余韻も冷めやらぬなかで「ピリオドの雨」とかちょっと、切り替え、気持ちの切り替えが!まさかこのビルボードでピリオドの雨が聞けるとは…「もういちど もういちど 君は演じるんだね」の吉井のセクシーさよ…いやこれ、この脳内の記憶をどうにか円盤にできませんか…?っていうほど、このねっとりとした、どこか爛れた愛の歌を存分に浴びて、いやもう神様、十分でございます…!と天を仰ぐ気持ちに。

Kinki Kidsに提供した「薔薇と太陽」。曲に入るまえに歌詞の中のva cu vanはあれ、ワインの保存容器のことなんだよーあんまりそういうツッコミ見なかったけどーとなぜ今ここで!?な裏話が。バキュバン(vacu vin)って言うんですって。そして「これ言うとね、みんな絶対「へぇ~」って言っちゃう(笑)」いやまんまと言ったけども!

ビルマニアではタンバリンも登場して、「これがタンバリ~ン!」ってタンバリン紹介してたのかわいすぎてしぬかと思いました。「生涯愛を捧げるあなたを見つけよう」って歌ってたよ。終わった後、ギターを変えてくれるローディーさんに次コレかあ~!みたいな顔したの私は見逃さなかったし、マイクでもちょっと拾って「聞こえた?」つってたのもかわよしでした。なんかすごく暑かったみたいで、「おれきょうびしょびしょだわ」と言いつつやおら胸元のボタンをバババとあけてタオルで拭きだすから目…目のやり場!いや別に困らないが!?みたいな状態だったことを告白しておきます。あれで恥じらうようなら吉井ファンやってません(豪語)。「ジャケット脱げばいいんだけどね、でも本編では脱ぎたくない!っていう意地が…これ着てタンバリン叩きたい!っていう」って言ってて、いやお前のそういうおこだわり、それこそが吉井和哉だよと私は拍手喝采でした。

横浜ではデニムだったけど、大阪ではドレッシーな感じで…どう?似合う?と振って、そんなもん…似合うに決まっとるだろうガァーーーー!!!といわんばかりの盛大な拍手を浴び、ああそう、うーんやっぱり?そうなるか…みたいな顔してしばし感じ入ってらしたのが(もしかしたら東京の衣装どうしよう的なお悩みタイムだったのかもしれないが)、すごく絵になりすぎるわ面白いわでマスクの下で破顔一笑だった私です。

本編最後の曲は血潮。真壁さんのギターすんばらしかったね。吉井ちゃんの声も絶好調で、なんだかわけもなく最後の「さよならいつも怯えていた私」の歌詞がいつも以上にぐっときまくってしまった。

アンコールでは宣言どおりジャケットを脱いでご登場。新曲の「みらいのうた」をここで披露できればよかったんだけど…それは冬にね!ツアーにとっといて、という話から「ちょっと愚痴るよ?」と前置きして、「あのさあ~~、見たよ?年末の武道館。『なんだ吉井和哉か』って」おい!ちょっと!だれ!どこのだれ!うちの和ちゃんそのあたり敏感肌なんだからやめてよね!っていうか普通にワイらに対しても失礼っしょ!と思ったりしましたが、ご本人は「いやそれはさ~~~いろいろあんのよ~~~わかるでしょ~~~?」と楽しげであったのでまあよかった。「今年は吉井和哉です」「12月28日はTHE YELLOW MONKEY吉井和哉で守っていきますんで」。そう言い放った後、会場をぐるりと睥睨したときの顔が、私が「い、い、いい顔してる~~~!!!」と最高に喜ぶキマった顔で、いやマジこれ冗談抜きに寿命、延びたな…?という感じがしました。

アンコールはMY FOOLISH HEART。不思議なことに、イントロを聞いた瞬間から、ぐっと心臓を掴まれるような感覚があって、めちゃくちゃ久しぶりに聴くな…というノスタルジーからだけではなくて、あっわたし、いまこの曲が聴きたかったんだ…というような、全身に音が沁みわたるような気持ちになった。なぜなのかはわからない。かつて吉井和哉はこの楽曲について、ファン投票で1位となったことに驚き「あんな心折れた男の歌を?」と訝しんでいたことがあるが、それこそがこの楽曲のパワーの根源なのではないかとおもう。決して投げ出すものか、逃げ出すものか…と歌いながら、それを誰かを鼓舞するためでなく、自分に向かって投げかける歌だからこそ。この楽曲をリリースした当時のことを思い出したし、私にとってTHE YELLOW MONKEYが人生の恋人なら、吉井和哉は人生の同志だ、いろんなことを分かち合ってきた…と過剰にセンチメンタルになってしまったりもし、気がつけばマスクが涙で濡れていた。替えを持ってきておいてよかった。

途中のMCで、吉井は、ドームでキンキラキンの衣装着てイエーイ!ってやりたい自分と、こういうところが好きな、神経質な自分と両方いんのよ、と笑い、だからこういう場所でも続けてやっていきたい、ビルボードさ~ん!と呼びかけていた。叶うといいね。でも、この人はやるかやらないかって、目の前のコップを掴むかどうかってだけだから、と言い、常に「掴む」という選択をしてきたひとだから、きっとまた新しい夢も実現させるんだろう。

こういう時代になって、へんな言い方だけど…なんだか戦時中みたいな、でもやれることはやっていきたいし、それでもダメだと言われたら中止ってことも当然あり得るし、でもぼくは歌を歌うひとだから、この時代にこういう歌を残したんだってことをやっていきたい、それが繋がっていくならうれしい。この人、こんなにしなやかな人だったんだな。ずっと前からそうだったのかな。でも、こういうときに、自分の愛するアーティストがしなやかな思考をしてくれているというのは、ずいぶんと、それだけでずいぶんと嬉しいことだ、と思いました。

ずっとロックシンガーとしてやっていくんで、そうも言っていた。
声を出せたら、きっとみんなが今日イチの歓声でその言葉を迎えたんじゃないかとおもう。
その歓声の代わりの拍手は、でもきっとちゃんと届いている。
そう思えるライヴでした。
楽しかったです。