パンチドランカー

7thアルバム「PUNCH DRUNKARD」収録。

アルバムの中の1曲とかいうことよりも、延々と続く113本のパンチドランカーツアーのオープニングであるという刻まれ方しかしていないし、それを意識して作られた曲なんだろうと思う。 客電が落ち、ギリシャ民族音楽である「オマル」が会場に流れ始めると、皆が立ち上がりまるで試合に向かうボクサーのように、これから始まる超弩級の興奮に備えていたことを思い出す。 最終日の3.10ではオマルの代わりにツアータイトルになぞったのか「ロッキーのテーマ」が使われ、吉井和哉はそのまんまボクサーの着るパーカーのようなものを被って登場していたが、DVDではその音ではなくて、聞き馴染みのあるオマルのほうが使われている。

 

DVDを観ていて思い出すことも沢山ある。中盤で会場の地名をコールするのが恒例だったな、とかアニー、ヒーセ、エマと音が重なっていくところがたまらなかったなとか、あのエマがギターに反射させた光を浴びるのが幸せだったとか、変拍子になるところの三国さんのキーボードが好きだったとか。 でも、参加した分だけ味わったはずの、その時その時の思いのようなものは実はもうほとんど忘れてしまっているんだろう。もっともっと、もっともっとと熱に浮かされたように追いかけていた興奮の記憶が、ただ残っているだけなのかもしれない。

まだまだ見えない、まだわからないと歌われるこの歌のように、私は決して満ち足りることがなかった。この曲を聴くと、なによりもその自分の飢えを思い出す。 奇跡でも起きない限り、この曲をライブで聴くことは多分もう、二度とないだろう。 そう思う。

果てしなく追いかけてつかめたのはえらそげで無愛想な夢のレプリカ それよりもこの愛を君に見せたい