青春の光と影

ジョニ・ミッチェルにあらず。

デビュー30周年記念リリースの一環というか、ずいぶん前に告知もされていた有賀幹夫さんの手によるパンチドランカーツアーの写真集が無事発売されました。やんややんや。

何度もここで書いているように、私はこのパンチドランカーのツアーに魂のかけらをとられてしまった人間なので、届いた写真集を1枚1枚、懐かしい旧友と再会するかのように味わいました。巻末にどのライヴでの写真かインデックスをつけてくださってるの、ちょうありがたい。宣材や解散のときのパネル展で拝見したものもあれば、もちろん初見のものもたくさんあり、なにより、どこをどう切り取っても最高にカッコいい。そういえば、「パンドラ」の映画のときにもそう思ったな。いろいろと考えすぎてしまったけど、結局のところ、ただひたすらカッコよくて、カッコよすぎて、どんな感傷よりもそのカッコよさの速度がはやすぎて、それしか考えられない。この写真集を見ても、同じことを思いました。

映画の「パンドラ」を監督してくださった高橋栄樹さんが、我らのエイキーがテキストを寄せてくれていて、それがとてもよかった。ある種の陰りだけでこのツアーをくくられるのはあまりにも惜しいということ、このツアーの音源を再生して、その完成度に驚いたこと、それがたまたま選んだ1公演だけでなく、どの公演の音源もその完成度が崩れることなく続いていくこと。本当にそうだった、と思う。私は自分が参加したライヴ、特に長崎でのホールライヴは、自分にとってはっきりとエポックなものだったと思っているけれど、何よりあの当時感じ入ったのは、それがこの日だけの特別なものでは決してなく、彼らは一見淡々ともいえる佇まいでいながら、いつもいつもこの爆発的なエネルギーを照射し続けていたということで、だからこそ、あの1年間、113本のツアーをめぐる我々の熱狂、狂乱、そういったものが倍掛けで加速していったのだろうと思うのだ。

まるで鬼っ子のように扱われた(何しろ『懲役』とか言われてますから)(根に持つ)ツアーではあったけれど、でもあの時代の、あの過酷さを乗り越えたことが、今の彼らを支えているんじゃないかと思うことがよくある。あれを乗り越えられたのだから、あのタフさを持てたことがあったのだから、そういう記憶は長じて自分を底から支えたりするものだ。そうだったらいいなという私の願望も勿論あるが、でもこの写真集の発売に寄せられたメンバーのコメントを見ると、あながち的外れでもないのではないかという気がする。再集結後に演奏された「パンチドランカー」の曲前で、我々の勲章、と言葉を重ねてくれたことも、それを裏付けているような気がする。

あのツアーにまつわるすべて、いいこともわるいこともぜんぶ、懐かしく切なく思い出されます。本当に青春だった。なによりも、全身全霊をかけて熱狂したこと、熱狂できたことを、あの頃の自分によくやったと言ってあげたい気持ちです。

写真集の最後の1枚は3.10のあの最後の写真だ。一緒に写真を撮りましょう、吉井がそう声をかけて、みんなが大きく大きく手を伸ばしたあの写真。いっときは遺影のようと喩えられても、時間が経てば同じ写真でも違う風景が見えてくるものなのだなと改めて思う。そういう意味でも、こうして20年以上の時を経て、またあの頃の写真たちと、青春の光と影と、再会できる機会をもらえたことは嬉しいことでした。私の魂のかけらは、やっぱりあの時間のなかに、まだ閉じ込められているような気がするし、それは決して悪いことではないということを、この写真集にまたひとつ教えてもらえたような気がしています。