熱帯夜

4thシングル。

 夏のライブの定番曲、というイメージがあるのに、実はこの曲もDVDに収録されていない。 シングルで収録されていないのは、プライマルを除けば熱帯夜と追憶のマーメイドだけだ。

PVの、ちょっとチープなキラキラのなかで舞い踊る姿しか残っていないとは残念な話。このPVを撮影したのは浅草のロック座で、雰囲気もすごくイエローモンキーに合っていていい感じ。 基本的にこの感想はそれがどんなにばかみたいなものでも自分の言葉で書く、という気持ちでやってはいるけれど、ひとつだけ例外を許してもらいたい。 1997年に発売された、TRIAD時代のすべての音源を網羅したTRIAD COMPLETE BOXには、宗清裕之氏による全曲解説のブックレットがついている。その中の「熱帯夜」についてのコメント。全文、引用します。

3rdの「jaguar hard pain」を発売してからしばらくして、メンバーたちとあるミーティングを開きました。今でも覚えていますが、中野の小汚い喫茶店でした。バンドの将来についての結構シビアなテーマでした。そこそこのセールスでも孤高のロックバンドとしてながらえていければ良しとするのか、それとも本気でチャートの一等賞を目指すぐらいの意気があるのか、どちらがこのバンドのこれからの姿勢なのか。メンバーの答は、後者の方でした。それならば、それを作品で示そうじゃないか、ということで作られたのがこの「熱帯夜」です。アルバム「smile」に半年以上先駆けて単独シングル・リリースされました。結果的に、チャートの初登場は60位ぐらいでそれほどのヒットにはなりませんでしたが、イエローモンキーの歴史にとって、ひとつの分岐点になった作品であることは間違いありません。ちなみに、初のタイアップつきのシングルでもありました。個人的に、今もこの曲を聴くと、当時のいろいろな思い出が蘇ってきて、こみあげてくるものがあります。

もしここで、彼らが前者の道を選んでいたら、もっと違う展開があったのかもしれない。でも、私は彼らが「チャートの一等賞を目指す」道を選んでくれなければ、多分彼らとは出会えていなかっただろう。孤高のロックバンドでも、いつか出会えたはずと夢見るほど、私は自分を信じてはいないからだ。 中野の小汚い喫茶店での、4人の決断が、私をここにつれてきてくれたのだな、と思う。

頭は体を突き放す 欲望と理性のメリーゴーラウンド 燃える躍動が目を覚ます 一千一秒胸張り裂ける I WANT YOU