HATE

「トブヨウニ」カップリング。

公式サイトでこの曲のサビの部分がストリーミングで流れたときから、ずっと私の心に引っかかり続けている曲。ことあるごとに、この曲が顔を出す。

at the WHITE ROOMツアーでは初日の新潟からずっとセットリストに変更のないままできていたが、ZEPP名古屋の2daysで初めて20GOで始まり、Spirit's Comingの代わりにHATEがセットリストに組み込まれるパターンが出た。私は名古屋の次のZEPP大阪でこのツアーを見たが、私が見た1日目がまさにこのパターンだった。名古屋では2日目に出ていて、いつものパターンなら1日目に基本セトリ、2日目がイレギュラーだろうと思っていただけに、この大阪の1日目が20GOから始まったのが今思うと不思議な気もする。しかしわたしは、おかげでこの曲を早々にライブで聴くことが出来たのだった。

母さんクリステルにそれとなく話をして、すぐ帰るって・・・というこの歌い出しを初めて聴いたときから、まるで戦場に向かう父親が語りかけているような曲だと思っていたが、「勝ったって負けだし平和のうそつき なんのためのこの闘争心」という歌詞からも読みとれるように、この歌詞は吉井自身が当時の世界情勢にインスパイアされて書いたことが、かれにしては珍しくはっきりと歌われている曲でもある。しかしそれよりもなおこの曲が切実に響くのは、なによりも去りゆく人が残されたいとしいひとたちに抱く普遍の思いがすくい取られているからだと思う。

そんな風に思いながらこのHATEを聴いていたからか、この日のライブでわたしはその1ヶ月前に亡くなったとある劇作家を思い出してしまい、どうしようもないぐらい泣いてしまったのだった。かれは劇団の公演の台本が完成に至る前に逝ってしまったのだということを、そのとき私は知ったばかりだった。彼が書きかけの原稿用紙に書き残したという言葉がこの曲の間中頭から消えなかった。「ここまでしか書けませんでした ごめんね」。

なぜ神は奪う癖に与えるのか、でも信じていないと、いないと・・・私はいったい、なにを信じているのだろう。吉井は何を信じているのだろう。その言葉を書かれた台本を受け取ったあの人は、何を信じたのだろう。 HATEは今でも、私の心に引っかかり続けている。

できるだけHAPPYを手にしてほしい