明日もたぶん生きてるだろう

20年間、一度も欠かさずに行われてきた「エレカシ野音」、初のDVD。 私が買ったのは初回限定盤の方(上のリンクは通常盤)ですが、これがあなたがっつりLPサイズなんですのよ。タワレコの店頭でこれ買うとき、見本パッケージをレジに持っていくんだけど、見本は普通のDVDの大きさなので、レジで「商品こちらになりまぁす!」と出されたとき「ち、違います!LDじゃないです!」と素で口走った件。いや普通に考えてもうLDは売ってないだろう(笑)

 

bridgeの野音に関するインタビューで、当初2日目だけのシューティングの予定だったのを、宮本が「初日も絶対録っておいたほうがいい」と進言したらしいです。で、見てみるとこれが雨、という天候も相俟って独特の雰囲気があっていい、じゃあ2日分抜粋で、という流れになったのだとか。

で、その1日目のDVDがめちゃめちゃよかったのだ。 ライブのDVD化、ってことから考えるとちょっと常識外れとも言えるぐらい、カメラの台数は極端に少ないし(正面のハンディと舞台上のハンディ、あとあっても1台ぐらいじゃないか)、カメラアングルに凝ってるというわけでもないし、台数が少ないからスイッチングもあってないようなもんだし、「遁生」のときなんて舞台上にハンディ直置きしちゃってるしね。なんだその即席固定カメラはっていう。台数が少ないからメンバーはもとよりヒラマさんも蔦谷さんもほっとんど画面に映らない、そんなのってありかー? これが他のアーティストのセルDVDだったら「おまえそれでもプロかあああ!」みたいなことになっても不思議じゃない、というような部分がたくさんあるのに、それでも、私が今まで見たエレカシのライブ映像の中で、ここまで「実際にライブを見ていたときの感覚」に近いものはなかった。なんで、どうして、っていう理由は自分でも説明つかないんだけど、でもエレカシのライブ映像みて、すごいし、かっこいいし、だけどあのライブで伝わる独特の空気みたいなものはやっぱり掬い取れないんだなあと思っていたものが、この野音1日目のDVDには掬い取れている、その香りがのこっているような気がするのだ。

 

もーのすごくマニアックな選曲だし、エレカシのファンでないひとにはなかなかすすめられないかもなあとも思いつつ、でもこの野音1日目のエレカシはいろんな人に見てもらいたいなあとも思う。ここには、彼らがここまでタフに戦い続けてきた、そして生き残ってきた理由が隠れているような気がします。2日目のライブも、もちろんパワフルなステージを見せてくれているけど、そして2日目のDVDは非常にまっとうに、カメラの台数も多くメンバーもサポートも映っていて、宮本のピンポイントな動きや表情も拾われていて、普通に「いいDVD」「いいライブ」だと思う。けど、1日目のあの空気、野音を満たす圧倒的な叙情、これは本当にエレカシならではだと思う。

 

出囃子も何もない、無音の中でメンバーが現れて「序曲 夢のちまた」が始まる、篠突く雨の中髪をかき上げて歌う宮本の声。これだ、これがエレカシだ、という感じ。 ライブを映像化する、ってなかなか一筋縄ではいかない作業だなああ、と改めて感じ入りました。こういう伝え方もあるんだなと。いろんなものを映しすぎることでこぼれてしまうものがあるってことなんですね。 1日目の夢のちまた、何も無き一夜、地元の朝、2日目の凡人、土手、曙光の流れ、そして晩秋の一夜。宮本にしか作れず、宮本にしか書けず、エレカシにしかできない曲の数々が、こうして映像に残ったことに感謝したいです。感想でも書いたけど、2日目のFLYERで宮本が間違えたとき、一瞬にして宮本についていくメンバーとサポートのおふたりにはホントに脱帽。蔦谷さんもヒラマさんも、客席にアピールなんてぜんぜんしない、ただ見てる、宮本の一挙手一投足を逃すまいという目で見ている。ほんとに・・・すげえバンドだ、エレカシは。

 

初回限定盤にはボーナスディスクがついていて、過去の野音での「ファイティングマン」を特別編集したものが収められているんですが、変わらない、といいつつも昔の宮本はやっぱり若い、でもって、どんどんどんどん格好良くなっていってるというのは何のマジックですかこれは。自信をすべて失っても、誰かがお前を待ってる。そう歌ってきて20年余り。あの頃の宮本は若いけれど、誰かがお前を待ってる、と歌う気持ちの熱さは変わっていない、変わっていないどころか、いよいよ盛んに燃え上がっている。 ほんとに・・・すげえバンドだ。エレカシは。