何もかも忘れてしまう前に

ジャケットかわゆ。 サカナクション「SAKANAQUARIUM2010 kikUUiki TOUR」@名古屋クラブダイアモンドホールに行ってきました。ダイアモンドホール初めて行きましたが、5階まで階段で上がらされるという仕打ちに一瞬泣き入りました(笑) フロアに入りきらないのではないかと思うほどの人、人、人。ぱんっぱんの入りでした。そのぎゅうぎゅうのフロアが腕を高く掲げ波のように揺れるさまはまさに圧巻。

いやーしかしあんなもう、ヘタしたらジーンズ絞ったら水がでるんじゃないですかというほどにライブで汗をかいたのは久しぶりです。踊りくるいました。くるいおどりをしました。 曲間を殆ど開けず、MCも本編中は短いのが1回あっただけ。とにかく音、光、音、音、音の洪水で、特に前半30分ぐらい続いただろうか?表参道26時やセントレイ、kleeなどを織り交ぜたシークエンスの見事さったらなかった。まだ全然「若い」部類にはいるバンドなのに、老練とも思えるステージング。バンドの音もとても良いし、あと誰のステージを見ても絶対に照明をイヤというほどチェックするわたくしですが、サカナクションは対フロアへの照明がすごく多いんですよね。それが彼らの音楽とも相俟って、ライブを見ながらもクラブで踊っているような感覚を呼び起こすのかもしれないなあと思ったり。

 

それにしてもアルバム先行シングルにもなった「アルクアラウンド」の爆発力はすごかった。たくさんの人がいいと思うものには必ずそれだけの理由があるものだけれど、この曲のパワーはやっぱり破格だとおもう。聴いているうちに、踊っているうちに衝動が自分の身体を駆け巡るような、泣きたいような、叫びたいような気持ち。 アンコールのときに割と長めなMC(とメンバー紹介)があって、そのMCのなんというか場慣れっぷりというか落ち着きっぷりというか、ベースの草刈さんの名前を執拗に連呼するかなりウザい客がひとりいたんだけど、そいつのあしらい方とかも堂に入ったもんでした。あーそうそう、山口君は中日ファンらしく、「今日ここで宣言しておくけど、いつかきっと中日の試合の始球式をやってみせるからな!」と宣言しておられました(笑)

 

そのMCの中で山口くんが、みんなね、ミュージシャンとか特別な目で見てるでしょ?変わんないんだよみんなと。みんなだって仕事しててさ、どうやったらうまくいくようになるのかなとか、楽しくやっていくためにはとか、そういう事を考えながらやるでしょ?そうやって考えたり、勉強したり研究したり。ミュージシャンだって同じだよみんなと、と言った。そのとき変な言い方ですけど、あー私の目にくるいはなかったってちょっと思ったな。私もそう思うし、この考えはもうずっと変わらないとおもう。彼らは音楽を創っている、そして私たちは生活を創っている、ただそれだけだ。でもこんな風にそのことをはっきり言葉にして言ったミュージシャンは私の知る限り二人目で、あと一人は奥田民生だった。

 

アンコールのMCでの山口君は饒舌だった。アルクアラウンドという曲について、とても力があって、だけど今のシーンでは、ああいう曲が1曲ヒットするとまた次も違う「アルクアラウンド」を求められる。そうしてどんどんどんどんミュージシャンも摩耗していってしまう。「目が明く藍色」をこのkikUUikiというアルバムのリード曲にしたのは、「そうではないサカナクション」もみんなに知って欲しかったから。あの曲は7分もあって、ラジオ局はだからかけるのをいやがる。でもリスナーがリクエストすればかけざるを得ない。そういうことがメディアを変えていく一歩だとおもう。twitterでもmixiでもなんでも、みんなが自分の好きだと思う曲を横にパスしていってくれるようになったらいいと僕は思ってる。 ゆらゆら帝国オリコンの1位になるような時代を僕は夢見てた、と彼は言った。彼らは去ってしまったけれど、そういう思いは忘れないでいたい。MCの途中からだんだんと照明が落ち、最後の曲になだれ込んでいく。

 

そもそも、私が何でこうも突然サカナクションの音楽を聴くようになったのかというと、昨年の夏フェスが原因だった。夏フェスで見たことではなく、テレビ放送を録画しようとして、目当てのユニコーンを録画したまま、停止ボタンを押すのをわすれて録画しっぱなしになったのが原因だった。ユニコーンの次がサカナクションで、なんとなくぼーっと消さずにその録画を見ていたら、最後に演奏した曲がとにかく素敵で、それがナイトフィッシングイズグッドという曲だと知ったのがきっかけでした。ナイトフィッシングイズグッド。なんというセンスのあるうつくしいタイトルだろう。 何度でも何度でも展開していく曲、コーラスの美しさ、サカナクションの曲はまるで螺旋だ。最後にはかならず違う景色が見えてくる。 とにかく汗だくで、今なら自分の汗くささでしねる!というほどだったので、家に帰ってとりあえずシャワーを浴びて、すっきりしてから近所のファミレスでごはんを食べていたら、かすかに流れるBGMが聞き覚えのある旋律のような気がして、じっと耳を澄ませた。「目が明く藍色」だった。誰かのパスがここに届いているんだなあとおもった。