シルクスカーフに帽子のマダム #10

1000年代最後のシルク、そして私にとって最初で最後のシルク。

この感想を書くために、とうぜん、何回も繰り返し映像を見るわけなんだけど、すげーよなって、吉井やっぱすげーよなって思う、思わざるを得ない。これはもう吉井和哉にしかできないパフォーマンスでしょう。この1曲、このたった数分間で、ここまでドラマを立ち上げることができる、それがたとえ「楽曲」というものの力が背景にあったとしても、だとしてもすごい。ここにいるのは吉井和哉であって吉井和哉ではない、という雰囲気を一瞬で醸し出す、このドラマ性はもう天性のものなんだろうなあ。

一番きついテキーラをちょうだい、の声、なきゃなんでもいいよ、ガソリンでもいいよ、と歌うときのあのまなざし、哀愁を帯びたサックスの音のなかでマイクスタンドにかけた右手だけで世界を作る。「大きな傷跡が」のところのブレイク、コイツが全部、で一瞬見開かれる目。声。手。目。声。仕草。ごめん、さよなら、ちがう、さよなら、さよなら、さよなら・・・

サックスの入ったアレンジになっているので、余計に劇的な部分が立ち上がってるというのもあるし、またあのマイクスタンドにかけた右手の動きをきっちり拾ってくれているところとか、吉井のキモの表情を逃していないあたり、カメラワークと編集も本当にGJと申し上げたい。すばらしいよ本当に。

意外と実際に見ていた時のことは覚えてないもんだ、って散々書いてたけど、でもこのシルクは覚えてる。吉井が「ちがう、さよなら」って言ったのも覚えてた。4000粒とこのシルクはわたしにとって永遠の憧れだった。それがかなった瞬間。再び会うことができて、こんなに嬉しいことはありません。