エレファントカシマシ@ZEPP TOKYO 11/21 レポート

このZEPPツアー自体の発表がちょっと遅かったこともあって、もともとぱんぱんだった11月12月の予定と見事にかぶりまくってしまい、それも大阪の時に大阪にいるけど違う予定あり、名古屋の時には福岡にいて福岡の時には名古屋にいるというすれ違いっぷり。この週末も土日の二日間で芝居を3本入れていてもうどこにも空きがない、あるとすれば日曜の夜で見終わったあとその日のうちに名古屋に帰ればなんとか、という状況。日曜のマチネは銀河劇場で2時開演の上演時間は2時間ちょい、りんかい線東京テレポートまでひと駅だから5時開演のライブになんとか間に合う・・・ということでもう半ば無理矢理に押し込んだのでした。絶対開演ぎりぎりになると思ったので2階席をがんばって一般で取ったのですが、当日ZEPPに辿り着いたときにはさすがに這々の体で、2階を取っていた俺GJ、だけどもうまったくパワー残ってない、こんなんで楽しめるのかと一瞬頭を過ぎりました。

でもほんと、twitterでも書いたけど、見ている間にパワーゲージがもりもり回復していくのが自分でもわかるほど、なんつーかほんとにいいライブだったし、私のそれほど長くはないエレカシライブ歴のなかでも確実に3本の指に入ると言っていいような素晴らしい時間でした。

 

アルバム発売からライブまでほとんど間がなかったので、ipodに放り込んだ新作を新幹線の中で2回聴いたぐらいだったんですが、その新譜の曲たちがこうもライブでいいってどういうことだ、ってぐらい存在感を放っていたなあと思います。

宮本はいつも曲を演奏する前にその曲がどういう曲か、ってことを説明したりするんだけど(説明というか、単に歌詞の一部だったりすることも往々にしてあるんだけど)、この日のライブではそれがほとんどなくてガシガシと次の曲、次の曲と畳みかけていっていたのも新鮮でした。その宮本先生ならではの事前曲解説ももちろん好きだし、この日もまったくやらなかったわけじゃないですが、でもなんつーか、伝わっているかどうかの不安さっていうか、そういうものからちょびっと自由になってるのかなーなんてことも思ったり。

だからものすごくMCが少なかったんですけど、その中でもあやうく爆笑しそうになったのがメンバー紹介のときの成ちゃんに対してとっさに出た「鼻につく」発言(笑)何が鼻につくのかまったくわかんないんですけど、いきなりそう言いだしてすぐさまいやすいません鼻につくじゃないですね失礼なこと言いました今日もダンディーに決まってます高緑成治成ちゃん!って一気に言ったのがもーおかしくて、成ちゃんはまったくどこ吹く風だったのもまたさらにおかしかった。一体何があったんでしょうか先生(笑)

あと「幸せよ、この指にとまれ」の前、よしイントロ入るぞ!って瞬間にギターを鳴らしちゃった石くんをバッ!と振り返って「・・・おまえ・・・」これまた石くんはどうということもなく、いつもより多めに股を割っておりますといわんばかりのがに股姿勢を維持。思わず宮本「おっさん・・・いい味出てるよ」あはは、確かに(笑)

今回のツアーにはここのところずっとサポートで入っていた蔦谷さんが参加せず(代わりのキーボードはなし)、ヒラマさんのみがサポートという形になっていたんだけど、もちろんその端的な音の違い、というのもあるんだと思います。でも音の違いだけじゃない、って部分もすごくあって、リズム隊が前面に押し出されたことによってトミと宮本のコミュニケーションっていうのが音の基本になると思うんだけど、これがほんとうに、かつて見たことない、というような波長の合い方だったのだ。そしてそのトミのドラミングが冴えに冴えていたのだった。

ちょっと脱線するけど、JAPANでのインタビューや、蔦谷さん自身のblogなんかを読むと、移籍以降ずっと宮本の、エレカシの音を外部にコネクトすることに心を砕いていた蔦谷さんが、「もう一度4人でやりましょうよ」と宮本にもちかけ、そこから今のアルバムが生まれて、この日のライブがあったんだなあと思うと、蔦谷さんって本当にエレファントカシマシってバンドが好きで、宮本浩次という歌い手に敬意を抱いているんだなという思いに打たれてします。

脱コミュニケーションから始まって、3曲目の「俺の道」のときだったか、曲が終わるときに宮本がその駆け巡る衝動を抑えきれない、とでもいうように身体を大きく震わせて歌ったのがものすごく印象的だったのだけど、この日の宮本は徹頭徹尾、その衝動と破壊と、そして再生の化身とでも言いたくなるような凄まじいパワーを放っていた。何度も聴いた「新しい季節へキミと」や、最初に聴いたときはいまいちピンとこないなあとまで思っていた「彼女は買い物の帰り道」や「幸せよ、この指にとまれ」も信じられないぐらいぴかぴかに輝いてみえた。「幸せよ~」については宮本自身が「アルバムの最後の方に入れたらビックリするほど良く聞こえちゃって自分でビックリしました」って言ってたけどわたしもビックリしたよ(笑)

その宮本の高いテンションを保ったままのライブ後半、歩く男から花男まで続く流れは圧巻だった。歩く男、大阪野音で初聴きしてはいたけれど、これがこんなにも広がりのあるアンセムになるとは意外で、その意外さゆえか、それとも明るく照らされたフロアでオーディエンスが高く掲げる拳を見ていたゆえか、なんとも言えない気持ちに満たされて泣いてしまいそうになった。続く「星の砂」の宮本のテンション(トミにもっと早く叩け、と飛び上がりながら指示してた)、ニューアルバムの「旅」がこの流れにずっぱまっていたのもよかったなあ。そしてさよならパーティからソーメニー!ぎゃー!私このときほど自分が2階にいるのを後悔した瞬間はありません!なんなら駆け下りていって一緒に飛び跳ねたいぐらいだった!このときのフロアのうねり、ほんとにすごかったなあ。さっきの歩く男のときとは違う意味で泣きそうに、っていうかもうちょっと泣いてたよ私!最後はこれでなきゃ、の花男で本編終了で、ああもう完全に満たされた、完全に満足した、もうアンコールないぐらいでもいいとその時はあまりの充実感にそう思ったほど。

しかしもちろんアンコールないぐらいでもいいけどなかったら怒るのがヲタの得手勝手というものでして、いっぱつめが「習わぬ経を読む男」でわ!初めてだ!と興奮。でもって次に宮本がやおら男椅子を持ち出してアコギを持って、なにかなあとぼんやり見ていたら、それが「寒き夜」だったのだ。思わず息をのんだ。青い照明のなかで、宮本の弾く決して音数が多いとは言えないアコギと、あの宮本の声が静かに響いて、息をするのも忘れてただ見入ってしまった。この日のライブでみせた衝動にあふれた宮本の力強さとある意味対極を為すこの叙情。すばらしい。これはほんとうに宮本にしかできない。

最後はもういちど客席に破壊の神をガストロンジャーとファイティングマンで降臨させて、ライブは終了。いつ、どんなときに聴いてもファイティングマンのフレーズは心を打つね。自信をすべて失っても、誰かがおまえを待ってる。ってあたしこの話何回してるんだよ、おばあさんか!いやでもおばあさんでもいい!たくましくそだってほしい!(イミフ!)

宮本はいつだって全身全霊だし、バンドはそれに応えようと尽くしているんだけど、でもこの日のライブは誰がどう、というのではなくてバンドだなあ、これはバンドのパワーだよなあってことを何度も思ったし、エレカシがこのレベルのライブを常に安定供給できるんだったら正直向かうところ敵なしだろうという気もしました。でも安定供給って言葉ほど似合わないものもないですね。いつだって右に転がるか左に転がるかわからないのもまたエレカシの大いなる魅力だものね。ともあれ、いろいろスケジュールの都合で迷っていたけど、これほど自分の無茶なスケジューリングに感謝したことはないし、これまた若干無理めなスケジューリングになりつつある新春武道館公演が今からとてもとても楽しみです。ZEPPツアーはまだ幕を開けたばかりなので、どうしようか迷ってる~というような方は是非足を運んでみてはいかがでしょうか!

エレファントカシマシ@ZEPP TOKYO 11/21セットリスト

1 脱コミュニケーション

2 新しい季節へキミと

3 俺の道

4 あの風のように

5 始まりはいつも

6 good morning

7 悲しみの果て

8 彼女は買い物の帰り道

9 幸せよ、この指にとまれ

10 明日への記憶

11 何度でも立ち上がれ

12 歩く男

13 星の砂

14 旅

15 さよならパーティー

16 so many people

17 男は行く

18 花男

19 習わぬ経を読む男

20 寒き夜

21 ガストロンジャー

22 ファイティングマン