エレファントカシマシ"悪魔のささやき~そして、心に火を灯す旅~"@浜松窓枠 ライブレポート

エレカシファンではないひとと話す時によくこの話をするんだけど、エレカシというバンドは実は驚くほどワンマンライブの本数が少ない。イメージからすると、全国津々浦々小さなライブハウスからホールまでくまなく回っていそうな「ライブバンド」のイメージがあるのに、本当に驚くほど少ないのですよ(東京・大阪以外の地方に住んでいらっしゃるファンの方はそれを実感されていると思いますが)。そのエレカシが、今回は30本近い本数を、しかも前半はかなり小さなライブハウスでツアーをやる、これはほんっとに貴重な機会だったと思います。実際、宮本は最初のMCで、浜松にくるのは13年(18年?)ぶりだと言っていた。

浜松で有名なライブハウス「窓枠」。いい名前だよなーって思ってたんだけど、宮本も「窓枠っていうんですよね、すごい、いい名前」って言ってました。横文字じゃないってだけじゃなくて、窓枠、言葉のセンスがいいよ。エレカシを(ZEPPとかではない)ライブハウスで見るのはELL以来なんですけど、サイズとしてはELLと同じぐらいなのかな。でも天井が高いので狭いという感じはあまりない。それなりにそれなりな整理番号だったんですけど、たまたま後ろの段差のあるバーの前が空いていたのでそこからじっくり。まー、当たり前だけど、近い! 

エレカシオフィシャルブートレッグではリハーサルの映像から始まって、各地のライブの映像が5分ほどYoutubeに翌日UPされているのだが(脱線するけどこれほんとにすばらしいサービス!つべやニコでアーティストを知ったというファンはこれからも増えていくだろうし、翌日という速度もすばらしい、選曲も極力日替わりのものを選んでくれているようで配慮が行き届いてるったらないですマジで、もう手放しで絶賛)それをUPされるたびに楽しみに見ながら薄々思ってたんです

宮本先生、今の髪型なんか異様にモテ髪じゃないですか

いや異論は認める!第一宮本の髪型など髪型であって髪型でなし(すぐかきむしるから)という気配もある中何言ってんだオマエと言われてもしょうがない、でもなんだ、ドンズバなんです今の先生のこう、御髪の長さ的なアレが!(ドレが!

そんなもんだから客電おちてメンバーが登場して、もうその瞬間から「せんせえかっこいいいいい(はあと)」みたいなもんですよ、もうどんだけかって3曲目の「明日への記憶」ですでに「何でこの人こんなにかっこいいのおおおお」って嗚咽するシマツですよ(病気ですね)。

いやしかし冗談はさておき(いやホントに嗚咽したんですけど)、この日は何回も思わずぐっとくる、胸に迫る瞬間が、何度も何度もあった。メンバー4人にヒラマさんを加えた5人の編成で、メンバーはいつもどおりストイックで、宮本もいつもの宮本で、だからこれはある意味見慣れた光景だったはずなのに、その「いつものエレファントカシマシ」そのものにぐっときてしまう瞬間が、本当に何度も私の胸を打ったのだった。

丁寧に歌ってきた歌です、ってどんな曲も丁寧にうたってるんだけど、という紹介から「悲しみの果て」。林檎ちゃんがこの曲のこと、「みんなが使う言葉で、みんなが覚えられるメロディーで、こんなにも圧倒的にカッコイイ、特許のような」と言っていたことを思い出す。そのあとに「風に吹かれて」、ううむ名曲が続きますなああ!

今回のツアーでは新譜の楽曲がメインになりつつも、定番曲もたくさん、そして毎回かなりレアな楽曲をおりまぜてくれるというすばらしいバランスで構成されているんですけど、この日は「じゃあガンダーラコンビネーションの…」と宮本が口にした時点で大歓声。「おまえと突っ走る」!!最初はギターを持っていた宮本ですがあっという間に外しそれを間髪入れずに受け取りにくる丹下さん(もう神業)。自分がギターを抱えていないからかトミにもっと早くもっと早くと要求する宮本。結果、ほんとに突っ走りました(笑)早かったー!

続いて「過ぎゆく日々」!うわああ初めて聴きます。古い曲で、と話始めた宮本が、多少とっちらかりながらも、「好きな人と出会って、そのときのときめきとか、でもやがて別れてっていう…その人生のダイナミズムっていうのかな…そういうものを思って作りました」と言った。今、歌詞を見ても、ほんとうにその若さ故のくるしさをいたく、せつなく感じるすばらしい歌詞で、もう参りましたとしか言いようがないのだけど、今はきっともうこういう詞を宮本は書かないし、書けないし、でもこうして今演奏してもそれがまったく古くない、というのはほんとにすごいことだなと改めて思いました。

中盤、ハロー人生!!、何度でも立ち上がれ、いつか見た夢をの畳みかけはやばかったなー!私、あんまりライブ中に声出したりしないんだけど、思わず終わった瞬間「最高―――!!」って叫んじゃったものね。いんやあかっこよかった、宮本も汗だく、私も汗だく、お客さんみんな汗だく。何度でも立ち上がれで胸熱になったのは私だけではなかろう。宮本が何度も客を煽っていて、もうほんと、もうほんと、こんなすごいものをなんで私だけが見てるんだろう(この時点で勘違い)、見て!みんな、もっとエレカシ見て!と絶対に嫌われる愛の押しつけ運動を展開しそうになりました。いつか見た夢をのトミのフィルは何度見ても超絶かっこいい!

「いっぱい曲を用意してきて…もうほんと…いい曲がたくさんあるんだよなー!」って感に堪えたように言ったのってこの時だったかな。そうだよねほんとそうだよ、それをしみじみ言ってしまう宮本先生がかわいいよ。さて男椅子が出てきてアコギをかかえて、となると、はいそうです珍奇です。いやあこの日の珍奇もキレてたなー!このかっこいいのとおもしろいのとの波状攻撃やめてもらえませんか好きになっちゃうから。「お金をなげてほしい」のところ、「お金を お金を お金を お金を」と壊れたレコードのように繰り返したところが表情も相俟って壮絶でした。続いてなんと「季節はずれの男」!!うわああーーー大好きです大好きです!!何度聴いても「努力を忘れた男の涙は汚い」の歌詞は鮮烈!!

次何だったっけ、と丹下さんに聞いたりなにかをのぞき込んだり(セトリの紙を貼ってるのかな?)しながら、ハンドマイクで「赤き空よ」。終わったあと、「(なにかの)番組でこれが2回もかかってびっくりした」みたいなことを言っていて、なんだったんだろうな~、成ちゃんがすごくウケてたんだよな~。そして「じゃあ弾き語りで」といって「涙」。

エレカシのライブレポを書くたびに同じことを言っている気がするけど、こういう宮本のの叙情性のかたまりのような曲、そしてこういう曲を歌うときの宮本の不思議な声、これを実際に目の当たりにできること、これはイベントやフェスでは体感できない、ワンマンだからこそのファンへの御馳走みたいなものだ。誰1人身動ぎもしないで聴き入る。何度体感しても、素晴らしい瞬間だなとおもう。

「幸せよ、この指にとまれ」で会場を沸き立たせたかと思ったら、本編最後は「悪魔メフィスト」でまたしても卓袱台ひっくり返し(笑)いやあそれにしてもすごい、もう、壮絶ですあれは。どこから声が出ているのか。もう、歌なのかどうかもわかんないレベル。

アンコールは桜の花舞い上がる道を、今宵の月のように、俺たちの明日と王道曲が並ぶ。そして「約束の歌です」といってFLYER。そしてやっぱり、の「ファイティングマン」。始まる前に石くんのほうをずっと見ているから早く弾けってことなのかなと思ったら、リフを弾き始めた瞬間「俺の準備がまだ」。なんやねーーん!(笑)しかし今日も今日とてファイティングマンは最高なのでありました。俺を、俺を、力づけろよ。何度も客席を指さし、ファイティングマン、おまえらみんなファイティングマンだ、と宮本は言っていた。

ダブルアンコール、MCもなく「笑顔の未来へ」。そして浜松ありがとう、いいコンサートになりました、と宮本からの言葉があって「四月の風」。何度も聴いた曲だけれど、泣いた。なんかもう、胸がいっぱいになるってまさにこういうことかと思うような、迫り来るものがあった。あしたもがんばろう、あいするひとにささげよう。ああ きみにあえたしがつの しがつのかぜ。

どこにも不安定要素のない、盤石、とでもいうような王者の風格漂うライブだった、そう思います。ここにいる誰しもにいろいろな思いがあって、でもそれをあんなにもどーんと、まさにどーんと受け止めてくれた、ほんとにすごい、エレカシすごい。

この間せっちゃんがustで、地震のあと、今まで聴いていた曲の意味が変わって聞こえるね、それはぼくの曲だけじゃなくて、という話をしていたけれど、せっちゃんがそれをポジティブな意味で言ったのか、そうでないのかはわからない。でも私はそれはその楽曲が真に力のある楽曲だからこそ起こりうることなんだろうと思っている。聴き手に解釈の自由を委ねているから、だからその時の環境で違った響きをもって聞こえてくる、それだけの懐の広い楽曲だからそういうことが起こるんだろうとおもう。

宮本はこの日、ただの一回も、「こんな時だから」「こんな時こそ」という、今や誰しもが必ず口にする言葉を言わなかった。この日演奏された楽曲はどれも震災の前に書かれた曲ばかりだけれど、その言葉のひとつひとつが、改めて胸に響く言葉ばかりだったことに驚かされた。この人はずっと力づけてきたんだなあと思った。私たちだけじゃなく、自分自身をも。あのファイティングマンの歌詞のように。だからこそ、「こんな時」なんて前置きがなくても、ともすれば不安に打ちのめされそうになる今のわたしたちに、まっすぐに届く力を持っているんだろう。

こんな紋切り型の文句で締めるのはかっこわるいことこのうえないですが、でも私がこの日のライブをみておもったこと、それは、「この国には、エレファントカシマシがいるじゃないか」ってことだった。この国に生まれてよかったよ、だって、エレファントカシマシがいるんだもんな。

2011.4.16 浜松窓枠 セットリスト

1 moonlight magic

2 脱コミュニケーション

3 明日への記憶

4 悲しみの果て

5 風に吹かれて

6 おまえと突っ走る

7 過ぎゆく日々

8 旅

9 ハロー人生!!

10 何度でも立ち上がれ

11 いつか見た夢を

12 珍奇男

13 季節はずれの男

14 赤き空よ!

15 涙

16 幸せよ、この指にとまれ

17 悪魔メフィスト

EN

18 桜の花、舞い上がる道を

19 今宵の月のように

20 俺たちの明日

21 FLYER

22 ファイティングマン

EN2

23 笑顔の未来へ

24 四月の風