吉井和哉 Flowers & Powerlight Tour 2011@京都会館第一ホール レポート

MCでもふれていたけれど、吉井和哉13年ぶりの京都。私が今回チケットをおさえた場所の、半分くらいは、13年ぶり、という土地だったり会場だったりするわけで、それは決して偶然そうなったわけではない。

烏丸御池の近くのホテルにチェックインしたら、なんと隣があの福寿園の[IYEMON salon]で、こりゃー入るしかないと嬉しがってそこでお茶なぞしてみた。煎茶を淹れるときに、自分で湯飲み~湯さまし~宝ひんとお湯をうつして、1分待って最後の一滴まで注ぎきって飲むという手間のかけよう。しかしこれがまーーうまかった!これがお茶ってものなのですか!その茶器セットをあやうく買いそうになりましたが今からライブなのでぐっとこらえましたよってどうでもいい

東山駅から白川沿いを歩いてゆるゆる会場に向かっていたら、だんだん西日がさしてきて花の名残が川を流れていったりして、西日の当たった山に大文字がみえて、なんともいえず豊かな気持ちになった。桜はもう終わりかとおもっていたけど、岡崎公園の八重枝垂桜はちょうど花の盛りだった。

今回はネタバレを避けようとも避けまいとも思わず、ばれたらばれたでしゃーない、でも自分からばれてますよ!っていってるところは見に行かないようにしよう、みたいなスタンスだったんですけど、吉井本人がスペシャでネタバレした以外は(あいつほんとにな!な!)ほとんど白紙状態で当日を迎えることになりました。 

以下はネタバレ!

感覚的にはかなり開演が押したような感じがありましたが、SEでジプシーキングスの「マイウェイ」がかかった瞬間にざわざわしてしまうこのヲタ心。もうぜったいこれ開演の合図みたいなもんでしょっていうね!

バックのスクリーンに幾何学模様の映像が映し出されて、インストのthe apples。吉井はサングラスをかけないで登場、黒いジャケット、Vネックの黒のインナー、黒スキニー、首にはストール。ステージ後ろに並んだ照明が一斉に赤くなって、ACIDWOMAN。ギターを弾きながら歌うんだけど、首に巻いたストールのフリンジがなんどもギターにかかって、そのたびにそれを「よいしょ」としまう吉井さんなのであったが、あまりにもその動きが頻発するため「そんなに邪魔なら取れ」という私の心の声が(笑)しかしそれは今後もずっと繰り返されるのであった…

続いてVS。これはもちろんライブで初めて聴く訳だけどこういう曲で盛り上げない(盛り上がらない)吉井ちゃんなど吉井ちゃんであって吉井ちゃんでないのであって、案の定ハンドマイクで、案の定右に左に、案の定腰をぐりんぐりん回して客を煽るのであった。一瞬顔見ないで腰見ちゃったよ。ライブの最初の起爆装置としてはいい働き…と思っていたら。えっなにこのイントロ、いやもちろん知ってる(いやというほどに)、知ってるけど!知ってるけどおおおお!というわけでかつてTHE YELLOW MONKEY楽曲上「最も速い」と言われ、歌詞の内容が「これアブネーんじゃね」と物議を(一部で)醸したCHELSEA GIRLがまさかのご登場!ひえーー、と思いつつしかしすごいですね身体の反応というのは!もう脳より先に動いてるもんね。どんだけ染みこんでんだよ。そしてこの曲の見所といえばなんといっても「あなたにも」と「あげたい」の間の吉井ちゃんのアクションである!えっどうするのやるのやらないのと凝視していたら、唇のはしをゆがめながら上から下にファスナーを下ろすような仕草ktkr。えっなに…新しい!今まで左右横方向バージョンだったのに上下縦バージョンもあるとですか!ここにきて新技開発ですか!

ジャケットを脱いで赤いシャツに。しかしまだストールをしている。だから~、邪魔なら取れよ!(鬼)佳史さんのドラムととても相性のいいヘヴンリーに続いて新譜からロンサムジョージ。ああ、えろい。わかっていたことだけど、えろい。右足でリズム取りながら身体を傾けておねえ叩きえろい。吐息えろい。囁き声えろい。正直私まだこの時点でアルバム2回ぐらいしか聴いていないので歌詞が合ってるのかどうかもわかんないのだがそのエロさだけでお釣りがくる感満載である。今回のアルバム、アウトロが凝ってるものが多いけれど、このロンサムジョージのあとも一瞬ブレイクがはいって、もう一度佳史さんのドラムが入るあたりで次の曲のためにギターを用意する吉井ちゃんなのであった。イースターはアルバムで聴くよりも断然ライブがかっこいい!ってそんなの吉井の場合はすでに定説ですって感じですね。

ちょっと話が脱線しますけど今回のプロモーションで吉井が「ライブの時のカウントとかすげーうるさい、間違えたらチョー怒る」みたいな話してたけど、そうそうそう私吉井のライブのそういうとこ大好きって思ったのだ。やっぱりひとつの「ショー」として考えている部分がすごくあると思うんだよね。だって前の曲からの繋ぎって言ってみれば見せ方、演出のひとつだからね。世の中にはそういうことを一切気にしないバンドってたくさんある(し、それはそれでもちろん良さがある)けど、前の曲の終わりからどのタイミングでリフを鳴らすか、スネアを響かせるかっていうことに吉井は昔から気にしていたと思うし、何曲かがある種のシークエンスのようにまとまっていて、それが上手く作用するシークエンスだけで構成されていくと自然にライブもよくなる、みたいなところはバンドでもソロでも変わらないところですよね。でもって私はやっぱりそういうことに気持ちを砕いたライブがすごく好きなんだとおもう。

13年ぶりの京都です、とMC。このホールって1960年に建てられたんだってね?ほんと、いい感じです、なにかが棲んでいそうな(笑)京都はいつ来ても変わらなくて、そういう街でいてほしいとおもう。

昔から、ぼくの中の女性というか、そういうものが書かせた曲があって、これもそんな一曲です、といって、おじぎ草に。

バックのスクリーンに前方から強くあてたライトでメンバーがひとりづつシルエットになって浮かび上がる。こういう影を使った演出にとても弱い私。高音がちょっときつそうでしたが、しかしあのなんつーんだ、ちょっとやけっぱちみたいな声も好きなんだよね私。何回聴いても「愛の重さとかどうでもいい」のところの凄みがすばらしい。

次の曲、バーニーのギターからはいって、吉井が逆光の中うかびあがって、マイクスタンドに手をかけたまま上を見上げて立ち尽くしていて、何となくそれであの曲だろうなと思った。鶴ちゃんのピアノがイントロを奏で、球根へ。

最初に書いたけどこれは吉井がスペシャの番組の中で、具体的に曲名こそ言わなかったもののほぼ言ってるのも同然!みたいな感じだったので、驚きはなかったです。物販で鉢植えも売ってることだしね。多分、私がもっともライブで聴いた回数が多いうちの1曲、そのたびにいろんなことを思ってきた1曲、そして今、吉井が渾身の力をこめて歌う曲。サビに入る前のスネアの音に合わせて、吉井が腕を高く上げ同時に振り下ろす仕草も、真っ白い光がそれを包むのも、マイクスタンドを両手で握りしめる姿もすべてが懐かしかったけれど、それよりも「世界は粉々になった でも希望の水をぼくは撒いて」というあのフレーズを胸が痛くなるような思いで聴いた。

しかし、この超弩級にドシリアスな楽曲から間髪入れずにファンキーなMUSICを入れてくるあたりがまさしく吉井(笑)大好きですよこういう曲!フッフー♪の合いの手楽しいしね!あとアウトロの吉井ちゃんのどやがおったらないしね!バックのスクリーンに揺れる鐘が映し出されて、何が始まるかと思ったらキタ!クランベリー!わあああいよかったやってくれた…(新譜発のツアーでも時々外される子いるじゃないですか、だったらかなすぃなと思ってたの)もともとこういうコロコロ曲調が変わっていくのが大好きだし同じ歌詞が途中と最後で表情を変えてみせるのとかたまんないっす。オー、クランベリーは当然両手拳をつきあげるよね!決まってるよね!完全なるゴスの集会だよね!でもって中盤では吉井がフェイク入れつつギターかきむしるという美味しい場面が!どうでもいいけど「なぜ感情」をついつい「金勘定」と歌いそうになるので自重してますいやだって似てるんだも

さっき鐘が映し出されたスクリーンに光がだんだん林檎を浮かび上がらせてきて、音がフェイドアウトしていく、と思った瞬間シュレッダーのイントロ。うまい!しかし声の調子はいまひとつだったかもしれない!よく節回しを変えて何カ所か歌ってたけど、かえてみたはいいものの着地点見失ってますよね的なところがあった(笑)でも「神様にあったらこんな風にいうんだ どんな目に遭っても生きていたいです」のフレーズをどうしても歌いたかったのかなとも思った。前方のムービングライトが上に光を当てていて、京都会館の天井にある反射板がまるで花のように見えた。

吉井ちゃんが兄貴になるソング、ONE DAY。曲に入る前に吉井がオフマイクで叫んでた。このあたりは本当に今だからこその選曲なんだろうなという気がしました。いい曲だよな…改めて…とおもったり。イントロのバーニーのギターがどこか「淡い心だっていってたよ」みたいだなと思ってたら、そこからGOODBYE LONELYに。

そして、東北に向けて一緒に歌って下さい、と言えば、やっぱり「バラ色の日々」しかない。いつもの、ビューティホー、はオフマイクだったな。この曲で、ほんとにくるのかな、という合いの手を吉井が入れることはもうないんだろうなと思う。長い鎖を引きちぎっても、と歌った。最後のARE YOU BELIEVER?で会場を指さした。その流れのまま、ビルマニアで会場をもういちど沸騰させる。きょうとーー!!と叫んでマイクスタンドのまえでくるっと回ってみせた。

本編の最後はLOVE&PEACE。イントロのギターと、ステージの後ろから射す光、それだけで泣きそうになる。なんで私はこの曲にこんなにも弱いのか。もうこれ以上悪い出来事が君と僕とに起きないように。もちろん、今ほどこの言葉を実感するときはない、けれど、逆に言えば今だから実感するわけじゃない。よくぞこの曲を書いてくれたものだよ、吉井はどこか叫ぶように、なにかを振り切るように歌っていた。ほんとうに、何度でもいうけれど、すばらしい曲。

アンコール、吉井一人がスタスタと出てくるので、えっなにまさかのアコギ弾き語りとかなの…?と戦慄しましたが(失礼な)、しばらくしてメンバーがみんなどことなく所在なげに出てきてステージに上手にこしょこしょと固まる。佳史さんはタンバリンも。そうこうしているうちに吉井ちゃんはハーモニカホルダーをセット!うきゃー!見、見慣れねえ!あまりにも!(笑)そしてなぜか武田鉄矢のモノマネをしてみせるのであった…に、似てない!もうはなから似てないのに「あっ、小さい「ぁ」を入れるの忘れた」とか言って「ぁくれ~だず~むばちの~」と鼻声で歌ってみせる。似てません(断言)。もちろん曲は贈る言葉ではなくHIGH&LOW。こういう遊び心好きやわ~、みんなのコーラスもいい感じ。佳史さんの「ヒーハー!」うまいw「変わりのない京都はなぜか何かに守られてる気がする」って歌ってた。「やりたいようにやれば?」がちょっとオネエはいってていひっと喜んでしまったよ。

メンバー紹介(バーニーの名前を「くさかり…」と言い間違えて大ウケ)(そしてバーニーのケツをモミモミ)のあと「ではみなさんにこの世のぜんぶの幸せをあげる曲を!」でCHAO CHAO!うわーーよかったこれもやってくれたーー!と思っていたら、ら、吉井がなぜかバーニーガン見。ふとバーニーに目をやるとなんと

ギターの音が出ていない(爆)

当然演奏ストップ、やり直しである。いやもうハタから見てもちょう焦るバーニー(とローディーさん)、そしてぴょんこぴょんこ飛びはねながら、やっぱりな、やっぱり昔からなんかあるんだよ京都は!魔物がすんでるんだよ!と笑いながら言う吉井。間をなんとか繋げようとさっきのメンバー紹介の言い間違いから「くさかりまさのり」と名前で遊ぶ(笑)そのうち「まさかべのくさのり」と「もののべのやまと」みたいな古代風の名前にしてたのに爆笑した。うまい。応急措置が済み、大丈夫?大丈夫だね?と念押しして再度「ではみなさんにこの世の全部の…」あはははは。しかし、終演後お友達とも話してたんだけど、ほんっっとこういう曲での吉井は球根とかと違う意味でゆるぎない!ペッパー警部だし宮尾すすむだし勝手にしやがれだし、自爆体質!で鶴ちゃん指さして港のヨーコだし、ハンドクラップ楽しいしいやーもうほんとこれぞ吉井、ザ・吉井だよ!楽しすぎる!

そのままWEKKENDERに流れ込み、いよいよ佳境。しかし、私は「ああプリーズプリーズプリーズやんないのか」とちびっと心をかすめていたことをここに告白します。うう、ライブ、楽しそうなのに。ツアーのうちに聞く機会あるやろか。

おかげさまで、The Applesがオリコンで1位を取りました、といったときの観客の拍手が強く長く続いて、吉井が「みんなあったかいな、赤の他人なのに」と笑いながら言ってた。でも、こういうときに自分は1位を取るんだな、手放しで喜べないときに1位を取るんだな、神様はドSです。でも、赤の他人だけど、ぼくが一番皆さんを愛してます。これは本当。僕の曲を好きで聴いてくれるひとのためにこれからも歌っていきます。

震災があって、CDも発売できるかどうかわからないっていう状況もあって、自分の音楽はそういう、平和だったからこそできた音楽なのかななんてことも考えました。意識が変わったところもある、まあ、ちゃらいのは治らないけど、ちゃらいのと釣りはやめられないけど、でも責任感をもって歌っていきたい。

できれば今年、いや、今年必ず、東日本でライブをやります、このFlowers & Powerlight Tour、6/30のフォーラムで最後にはしません。いろいろこれから実現するためには大変なこともあるだろうけど、応援して下さい。

最後はFLOWER。Mステで歌ったように「だけど毎日をできるだけgoodに」と歌ったけど、もうこの歌詞のほうがなじみがある気がする。サビで観客の両手がたかくあがってゆらゆらと揺れた。今日この会場にいたかどうかはわからないけど、あのテレビを見て、あの曲を聴きたいと思ってここに足を運んでくれたひとはいたのだろうか。いたとしたら、どんな気持ちで聴いたのだろうか。ここからまた始まっていくたくさんのものがあるといいな、そう思った。

ツアー日程が発表されたとき、この京都とほか何カ所かは最初から「絶対にいく」と決めていたところで、それは13年ぶりというのもあるけれど、この京都に関してはとてもとても古いホールで、そういう場所で吉井を見たかった(古いホール大好きなのです)ということ、そしてかつてその場所で行われたライブに行きたい、と思いながら足を運べなかったそのリベンジみたいなものもどこかにあったんだとおもう。このホールは改修される予定となっていますが、その前に、この歴史あるホールで吉井和哉のライブを見られて幸せでした。

でもって、終演後この前のなんばhatchを見たお友達にセトリを聞いて絶叫したことはいうまでもありません。OH!脳!