30周年が来たりて笛を吹く #24「球根」1998.05.02 神奈川県民ホール

パンチドランカーホールツアーさなかの1998年5月2日、神奈川県民ホールの「球根」。この映像はテレビ神奈川のLiveyで放送され、その映像が「ライブ帝国」というDVDに収録されています。片隅に「映像協力tvk」の文字があるのはこのためですね。

 

1998年5月2日はhide氏の命日で、2018年に放送されたSONGSの特集に吉井和哉が出演した際、まさにこの当日のことを語っていた。突然の訃報を会場に向かう途中で聴いたこと、年は上だけれど同志的な心情を抱いていたこと、そしてhide氏が「球根」を高く評価していたこと…「その日のことはよく覚えている」と。

 

そういった背景を知っていても、知らなくても、このパフォーマンスの前にはもはや言葉はいらないのではないだろうか。これほどまでに切実で、これほどまでにこの楽曲が奏でる生と死を、エロスとタナトスを響かせることができているパフォーマンスがあるだろうかと思う。亡くなったひとりのすぐれたアーティストへの想い、長い長い、本当に長いツアーのまだとば口に立ったばかりというこの頃に抱えていた彼自身の、そしてバンドの想いが、こうして20年近くを経た今、画面を通して見ていてもこちらを飲み込むような気迫で迫ってくる。

 

土の中で待て命の球根よ 悲しいだけ根を増やせ…そう歌った後、息を大きく吸い込むときの吉井和哉の眼が、私の脳裏に刻み込まれてしまっている。何度見ても、まるであの世とこの世の端境を見ているような眼だと思わないではいられない。