30周年が来たりて笛を吹く #30「未来はみないで」2020.02.11京セラドーム大阪

30 memorable shows of 30 years、その名の通り30周年になぞらえた30回のシリーズ企画だったので、今回で最終回。東京ドーム公演が延期(もしくは中止)となってしまったので、この企画もどうするのかな、30回と言わず続けてくれてもいいけどな…とひそかに思っていたが、最初の企画の趣旨通り、30回でピリオドが打たれることに。

 

というわけで今回はバンドの最新曲「未来はみないで」。この最終回が4月10日ってことを考えても、おそらく本来なら東京ドームの映像が使われるはずだったんだろうなあ…などとおもう。今回の映像は京セラドームのもので、先日Love musicでも同じ映像が放送で使用されていた。

 

この楽曲をめぐるエピソードとして、2016年の再集結第1弾として用意されていたけれど、直前にできあがったALRIGHTが第1弾の椅子に座ることになった…という話が明かされているが、しかし今のこの状況、つまり世界中が明日をもしれぬ運命の嵐のただ中におり、何もかもが不確かなこの時に、最新曲としてこの楽曲が世に出たのは、運命とひとことでは済ませられないような、なにかこのバンドのもつ引力めいたものを感じないではいられない。

 

「未来」を「みないで」とする語感だけをとらえると、ややもすればネガティブなイメージになりそうな気もするし、これを再集結第1弾に?と思うと若干センチメンタル成分が多いのでは…という感じがするが、個人的にはこのタイトルを聞いたとき頭の中で連想したのはオーデンの「見る前に跳べ」という詩である(私が知ったのは大江健三郎からですが)。Look if you like, but you will have to leap(好きなだけ見ていてもいい、だがきみは跳ばなければならない)。「跳ぶ」前にいろいろなことを…それこそ、彼ら自身にしかわからないいろんなことを考えたであろうことを想うと、この曲を再集結第1弾の楽曲として候補にあげたのも、わかるような気がしてくる。

 

この京セラドームでの演奏は文字通り人前での「初出し」演奏で、かつてメカラウロコや、パンチドランカーツアーの終盤などで、「ライヴの最後にいちばん新しい今の自分たちを見せる」ことをよくやっていたバンドの空気が感じられる。初出しならではの丁寧さが楽曲を彩っていて、とてもよい。

 

吉井和哉はかつてソロのアルバムリリース時のインタビューで「アルバムの最後の言葉がいちばん言いたいこと」と語っていたことがあるが、シーズン2の最後の言葉がいま、彼のいちばん言いたいことなのかもしれない。この言葉で楽曲が締めくくられていることに、やはり、このバンドのもつ引力のようなものを強く感じる。「また会えるって 約束して」。