宴、終わらない

5日の20時からのナゴヤドームの配信、皆々様おつかれさまでしたー!個人的に夏休みど真ん中ということもあり、がっつり楽しむ態勢で当日を迎えました。改めて、むちゃくちゃいいライヴだったし、これを30周年の、自分たちとしては初のハコであるナゴヤドームで出来ちゃうのがすごいし、12月28日のスペシャル感は健在だし、本当につくづくいい時間だったなと。それに尽きる。

 

…いやそれに尽きるわけでもないんだけど!とはいえ散々ツイッターでこまけぇことを言い散らかしたので、そして同じ話を2度できないので(しっかりして)、ここではむたくた個人的な話をします。

 

この5日の配信を楽しみにしていたのは、単に去年の暮れのライヴ映像が見られる!というだけではなくて、とうとう、とうとう、“I”をやったところを現認できる!というのが大きかった。いやその場にいたんですけどね。めっちゃ現認してたんですけどね。でもあまりのことに視野狭窄を起こし(「字幕出てたね!」「えっ知らない」)記憶が混濁し(「何の曲のあとだっけ?」「パンチドランカー!」)、果たしてあれは…現実?それともあまりにも切望しすぎたために見た集団幻想?みたいな気持ちになっていたからです。そう、それほどまでに私と、私の友人たちは、この曲が演奏されるのを首を長くして待っていました。もはや首を長くし過ぎたと言ってもいい。

 

思い起こせばあれはもう…20年以上前(てけとう)、このバンドにはまりたて、沼の入り口に立ってさーあ今からドボンといくよー!状態だった私は、ネットで知り合った友人の家でTHE YELLOW MONKEYが出演した過去のテレビ番組を編集した、通称「裏ビデオ」を喜んで見ていました。そこにあったんですね。1995.12.31、年越しの渋谷公会堂、LIVE DI;GAの放送ぶんが。実はこの時の放送の一部はDVD「ライブ帝国」に収録されているので、お手持ちの方はぜひ確認してほしい。放送時には1曲目のラブコミから「いやおまえ…マジでイッちゃってるな?」と言わんばかりに吉井和哉がギランギランのメランメランでエロンエロンだったわけですが、それがもう、全編続くんです(太陽が燃えているとかすごいヨー!)。そこに投下された“I”。「金切り声で幸せと」って、そういうことかぁ…と思わず赤面するようなアクションもさることながら、「ハイになって」で指を突き立てて見せる吉井。いやロビン。その眼。まるで画面から銃で撃たれたかのように私は後ろにひっくり返りました(物理)。なんだこれ。なんだこのえろいあれは。なんだこのかっこいい生き物は。

 

そこからずーっとわたしの“I”待ちが続くわけですが、これが!また!その直前までわりと頻繁にセットリストに入っていたくせに!突然ぱったりとやらなくなった。1996年1月の武道館の公演では「お馴染みのアンコール」とかまで言ってるくせに!そこからの歳月たるやですよ。バンドが解散する前から、たとえばメカラ10でわりとSmileがフューチャーされたときも、SEE-SAW GIRLまではいくんだけどねー!イエ・イエ・コスメティック・ラヴまではいくんだけどねーー!!“I”が出ない。出ないったら出ない。そうこうしているうちにバンドが解散し、これでわたしの“I”を聴く目も消えた、そう思うでしょう?ところがどっこい、私たちはひるまなかった。いや解散当初はひるんでましたけど。ひるんでっていうか、思うところありまくりでしたけど。吉井和哉はソロでもなかなかに、なかなかのバンド楽曲を挟み込んでいたので、ワンチャン…ある?ない?ある?そう言い続けてきました。ライヴのたびに。20年以上!すさまじい執念です。解散中でさえそうなんですから、2016年の再集結後はいわずもがなです。

 

しかし、さすがに長いこと言いすぎて、もはやこれは「叶えられないことをネタにしたお約束」のようになってきていたことも事実です。ライヴの前に集まり、ワイワイ話しながら、今日こそ“I”、やるんじゃね?あるでしょ!あるある!と言い合い、終わった後は「やんなかったねー!」と言い合う。そういうお約束。っていうか吉井ちゃん、この曲のこと忘れちゃってない?大丈夫?なんならもうアニーが勝手に始めちゃえばいいんじゃないかな!っていうかとつぜん「僕は」とかカンペを出したらいいんじゃないかな!「僕は」ぼくは…愛撫のために生きてます!って入ればこっちのもんなんじゃないかな!こういう話を真剣にしている時点でもうだめだ。お薬多めに出しておきますね。

 

しかし、今回はマジで風向きがひょっとして…来てる?という感じがありました。なんか、名古屋のラジオで、再集結後初めてやる曲がある、って言ってたりとかして、もしや!?みたいな(後から思えばこれはシルクのことだったのだろう)。雑誌のアンケートで、ライブで聞いてみたい曲の1位に“I”が入ってたりとか。なんだろう、きてる?きてるのか?そう思わせる何かがありました。

 

ナゴヤドームの開演前も、いつものように「“I”やるでしょー!」「やるやる!」と言い合ったわたしたち。しかしそれが現実になったら、なったら…視野狭窄と記憶の混濁ですよ。いやもう信じられなかったですもん。先日の配信でも、もうDANNDANあたりで「もうすぐだ…」と思うと緊張していてもたってもいられなくなるぐらいですもん。何やるか知ってるのに、セットリスト見てるのに、あのイントロで「うそぉ!」と何回でも言ってしまうぐらいですもん。

 

何より私が嬉しかったのは、この積年の、まさに宿願が果たされるその場に、ずーっとこの楽曲への渇望を分かち合ってきた友人が全員居合わせたことでした。わたしが“I”ばっかり集めたDVD作ったりして、それをわははわははと笑ってきた時間、やるでしょー!やるやる!と言い合ってきた時間、惜しかったー!てっきりSmileの流れがきたかと思ったのにー!と言い合ってきた時間を共有してきた友人が全員、その場に立ち会った。友人のひとりは諸々の事情で遠征ができないので、当初はドームツアーも東京だけの予定だったんだけど、名古屋いきたい、なんか予感がする、そういって開演時間早いから、日帰りワンチャンあるのでは?と参戦することになったんですよ。いやこの人のこういう勘というか、まさに第六感的なものってほんとうにすごい。もうふるえる。西野カナばりにふるえます。

 

会場からホテルに向かうタクシーの中で、全員がどちゃくそ早口でぎゃいぎゃい話して、パンチドランカーのあとだった!って私が大ウソこいて、シルクよかったーパンチめっちゃやばくなかった?ブギー2連発!ともう言いたいことがとめどなくあふれて、日帰りする友人を新幹線乗り場まで見送って、残ったふたりで肉でも食うか!つって焼肉食べながらずーっと反芻して…そういったことのすべてが、ほんとうにここまで、ここまで思い続けてきた私たちへの、盛大なご褒美の時間だったと、いま振り返ってみて改めて思います。

 

いつも私と一緒にライヴを見てくれる友人とは、わりと事あるごとにライブの最中に手を掴んだり肩を掴んだり抱き合ったりして喜びを爆発させちゃうんだけど、このナゴヤドームの“I”のときほど、ぎゅうぎゅうに抱き合ったことはなかった。抱き合いすぎて眼鏡が曇り、そのあとのSUCKが始まってから二人おもむろに眼鏡を外し、同時に拭き始めたのが最高におかしくて、SUCKが入ってこねえ!と言いながら笑ったこと、わたし一生忘れないとおもう。

 

このバンドにはいいときもわるいときもあって、だからファンにとってもいいこともわるいこともあって、でもこういう「一生忘れないとおもう」っていう瞬間をほんとうに、ほんとうにたくさん積み上げさせてくれていることは間違いない。このバンドを好きになった瞬間からそれは始まっていて、今なお続いているのも、すごいとしか言いようがない。

 

配信で改めて見た2019年12月28日のTHE YELLOW MONKEYは、もうすべてがかっこよくて、セットリストも最高で、パンチのツアーに魂のかけらをとられてしまった人間としては、パンチドランカーめっちゃかっこよくない!?ってツイートを検索してはそうであろ!そうであろ!とニマニマしちゃうし(誰目線)、ブギー2連発の見事な繋ぎ、最新曲であるballoon balloonからライブの帝王A HENへの流れ、センターステージで水を得た魚のように生き生きするメンバー、本編が3rdアルバムの1曲目であるSECOND CRYから始まり、2ndアルバムラストの「シルクスカーフに帽子のマダム」で終わる、まるでTHE YELLOW MONKEYの歴史をぐるっとたどるような構成になっている心憎さも、アンコールの最後の最後まで、そこまでアンコをぎゅうぎゅうにつめなくてもいい!ってぐらい楽曲をぎゅうぎゅう詰めこんでくるサービス精神も、なにより、この広いドームを演出や環境の力を借りずに、自分たちの楽曲とパフォーマンスだけで手のうちに掴んだことがわかる、まさに圧巻の3時間だったなと思います。

 

いろんな事情があって、DVDやBlu-rayでの発売が困難なのかもしれませんが、この日のライヴは絶対にのちのち、「あー完全版出しておけばよかったのに」ってみんなが言う、そういうライヴであることはもう、間違いないので、ぜひ円盤化を検討していただきたいです。既発のライヴ映像なめるように見倒して全曲感想とか書いちゃう女の言うことを信じてください。このカシオミニを賭けてもいい。

 

そうそう、私は上記のような事情から、メンバーのチャット…?そこまで手が回らねえ!とチャット度外視スタイルで見ていたので、あとからチャット機能がダウンしたことを知りましたが、ライヴ見ながらうだうだ喋るメンバーの映像が見られるというおまけがついてきてなんだか申し訳ない気持ち。なんだったらこれを円盤の特典にしてくださってもいいんだよ!

 

配信という形ではあったけれど、画面を前に楽しさと嬉しさと音楽への渇望を爆発させることができて、好きなものへの好きな想いを爆発させることができて、とても楽しい時間でした。そして次、そして次です。配信を見たら、やっぱりどうでもライヴに行きたい、そう思わせるバンドの、次を待っています!