ある秋の夜長に

エレファントカシマシ日比谷野外音楽堂、2日目。

2日目、予報がずれてもしかしたら雨やむかも!という希望がかなって昼過ぎにはあがりました!よかった~、うれしいうれしい。2日目もBブロック、でも今度は石くんサイド。割と前の方だったので良く見えた!

さてさて、前日にエレカシファンの方とお茶しているときにですね、「聴きたい曲」の話になって、うーんうーんなんだろうなって思ったんですけど、私いままで奴隷天国聴いたことがなかったんですね。そんなにレア曲!というわけじゃないのに、なぜか「奴隷天国をやらない方」にばっかり参加していたというか、でもってあの曲がすげー好きなんですよ。16年前の曲だけど、全く色褪せない圧倒的なかっこよさがあるし、ファイティングマンとならんでエレカシの「リフで推す名曲」だと思う。

メンバーが登場してきて、わっ宮本今日はシャツじゃないわ、とか思って、それでトミがバスドラをドン!とやったんだけど宮本が止めて、何かと思ったら水飲んで、おい!っていう(笑)それでもう一度合図して始まったのが奴隷天国!!!うそおおおおお!!!なんかもうすでに御馳走様って感じなんですけどおおお!!いやーしかし中盤からの展開のかっこよさは異常。そして例の「何笑ってんだよ」のとこ、次は「なに踊ってんだよ」だった(そして文字通り踊っていた私)「おめえだよ、そこの」をもうしつっこいくらい宮本は繰り返して目をむいて煽ってた。ヤバイかっこよすぎる。

達者であれよ、格好良かったなああ。あんなにカッコいいとは。昨日はちゃんと説明できなかったんだけど、と言って今は蔦谷さんとヒラマさんに手伝ってもらってるんだけど古い曲をメンバーでちょっとやりたい、みたいな話をして、4人だけのステージ。昔「生活」っていう、あんなのよく出せたなってアルバムがあって・・・」と言って、その中でもマニアックな、と話して始まったのが「凡人-散歩き-」。

いやもう宮本の第一声がすごすぎて、声の圧力でのけぞるんじゃないかと思ったほどだった。すげえ。「生活」の曲はどれもこれも個性の強い曲ばかりだけれど、それにしてもこの迫力ってどうなんだ。これは宮本にしか歌えないわ。

続いて4人だけで「やさしさ」。昨日のもよかったけど今日のもいい!でもって次に来たのが「土手」だよ!ちょっと!どうよ!宮本が「懐かしいですね、この一方的にやる感じが」とか言ってたけど、でもこういう圧倒的なものこそエレカシの真骨頂なんだとおもうなあ。

生命賛歌、曙光(!!!)、季節はずれの男の畳みかけに茫然、ジョニーのあと「人生の午後に」!ひえー。もう脳内メモリがついていけん。シグナル、ほんとに難しい歌だけどがっつり歌いきってたなあ。調子の良さを伺わせた。でもって、「また古い歌だけど」「ぴったりなんですよいまの時期に、凄惨な気持ちになる」「いや凄惨な歌じゃないけどね、いい歌なんですよ、青年の・・・」といって「晩秋の一夜」。ああ・・・これもすごい歌だなあ。「生活」ってほんとすごいアルバムだ。蔦谷さんとヒラマさんのサポートが絶妙だった。つめたい風が何度かさっと会場を吹き渡って、ここで歌われる青年の背中の寂しさを浮き上がらせるようだった。

FLYERのとき、宮本が1番の、Aメロに戻るところを完全にすっ飛ばすというハプニングがあった。うわっ、飛ばした、って思ったんだけど、バックの5人はなんとそこから瞬時に宮本の歌に合わせたのだった。あっ、って顔をしてたのはほんと1秒もないぐらいだったんじゃないだろうか。全員が、本当に瞬間的に一気に舵をきる感じで宮本についていっていて、それはここで演奏を止めることはぜったいにしない、というメンバーの統一した意思が見えるようだった。あれは本当にすごかった。しかし完全にすっ飛ばしたので、この日のFLYERで宮本は多分同じところを3回ぐらい歌ってると思う(笑)

コールアンドレスポンスのあと、ギターを持ってきたローディーに何かを話しかけてそのギターを使わず、「じゃあ、ゴクロウサン」の一言で「ゴクロウサン」が始まる、ほんとこれもすごいよマジで。

今日もアンコールはさほど間を置かずに出て来てくれた。宮本は黒いシャツをお召し。多分だけど、宮本自身も、すごく気分が良かったんだろうとおもう。今日はみんな機嫌がいいね、晴れてると機嫌がいいんだな、みんなの機嫌がいいとうつるんだよ・・・なんて言っていたが、宮本こそ「野音ならではの空気」を味わい尽くしていたんじゃないだろうか。アンコール、渋谷さんがご自身のblogで予定されていたセットリストをUPしてくださっていたが、それとこの日のアンコールの曲を見ると、いかにエレカシにとってセトリはセトリであってセトリでないのかというのがよくわかる。RO69のライブレポには「本番直前で変えまくった」とあるが、これ本番直前で変えまくってないんです、本番中に変えまくってるんです。アンコール2曲目、何をやろうとしていたのかはわからないが、宮本がそれをやめて、蔦谷さんに何か言って、石くんにも何か言って、「俗な歌だけど、いい曲だから、って自分で言っちゃいけないな」とか言って「友達がいるのさ」だよ。もうさ、照明も最初青い照明だったんだけど、サビのところのライトで迷ってたもん(笑)

で、次こそと思ったら「もう1曲」って宮本がジェスチャーして、デーデ。何回も「もう1曲」「もう1曲」って言ってたなあ。終わりたくなかったのかな。昨日と一緒で俺明日でラストかと思いきやスライドギターがここで出て来てSky is blue。えっこれでラストなのかな?と思ったら、蔦谷さんもヒラマさんももうどこがラストなのかわかんない状態で、宮本の一挙手一投足を見つめるだけっていう。

これで最後なのかなあ、最後花男やってくれないのかなあ、と思っていたら、ギターをローディーに渡した宮本は袖に帰る素振りを見せず、トミに何事か呟いて、始まった。「花男」!多分、会場のみんなが「待ってました!」と心の中で叫んだんじゃないだろうか。うれしかったなあ。やっぱりライブのラストにふさわしい、エレカシを象徴する曲ですよね。

花男の高揚感がすごかったので、そのまま勢いで手を叩いていたらほとんど間髪入れずに宮本がもどってきた。まさかのダブル。ありがとう、ってとても濃密ないいコンサートになりました、と言ってくれて、最後は「ガストロンジャー」。ガストを歌うとき、あの歌というか朗読のような部分を、かなり原曲に忠実に歌うときもあれば、フリーダムなときもあって、今日は後半はかなりフリーダムなほうだった。それで、いつもだったら雄叫び一発、みたいなところで、宮本はいつものようにアンプの上に乗って「みんな、かわいいぜえええ!」と叫んだ。あー。不覚にも、萌え殺されかかりました。

1日目29曲、2日目なんと33曲。二日間で、トータル60曲を超える歌を、あの熱量で放つことができる宮本浩次というひとのすごさに、あらためて感じ入りました。でもって、やっぱり野音エレカシは素晴らしいです。1日目は雨という状況も相俟って、エレカシの持つ圧倒的な叙情を、2日目は宮本のなかのふつふつと滾る激情を堪能させてもらったなあと思います。

今回、蔦谷さんとヒラマさんのサポートが映える場面もすごくあって、蔦谷さんが鍵盤をこれでもか!と唸らせたり、ヒラマさんが力強くギターをストロークしている姿にも何度もぐっときました。それにしても、これほど長くやっているエレカシにパーマネントなサポートメンバーがいないというのもいやもうそりゃそうだろうと思ってしまうわけですが、だって大変ですよ、あの宮本についていくのは。メンバーは確かにすごい、それにはもう小学校からのつきあいという歴史の重みをひしひしと感じるんだけど、イントロの回数もアウトロの回数も決めてない、宮本が「行くぞ」って顔をするのが合図ってバンドにサポートで入るのは大変だよ。2日目のMCでね、宮本が石くんに「あなた今日俺の顔見過ぎ」とか言ってましたけど、それはさあああ、宮本がいつ、どんな指示を出しても、もしくはどんなジェスチャーをしてきても瞬時に対応しようと思っているからだろうに(笑)石くんだけじゃない、ギターもベースも、ソロパートになったらがんがん前に出て来てアピールしたりって普通の光景じゃないですか。サポートで入ってもそういうことってあり得るじゃないですか。でもみんな、客の顔を見ているより、宮本の顔を見ているほうが長いと思う。この船を動かしているのは宮本だし、それに全身全霊で応えるだけだ、という気合いが、メンバーのみならずサポートのお二人にもあって、その熱さに胸打たれないでいられようかっていうね。

しかしそれはそれとして、開演前に渋谷さんが撮った楽屋のヒラマさんの可愛さは異常。どこの女子だよ!

きっと宮本の中には「予定調和」なんて言葉はないんだろうなあ。あんなにも、あんなにも、自分を毎回さらけ出せる勇気はどこからくるんだろう。ボールを投げ続ける勇気はどこからくるんだろうね。歌手としての圧倒的なポテンシャル、あの天性の声も含めて、宮本は確かに音楽の神に愛されているとおもうけれど、何よりもすごいのはあんな風に、拒絶されることをおそれずに、いやおそれていたとしても、それに怯まずに自分をぶつけ続けていくことができることそのものなんじゃないかと思う。

野音20周年本当におめでとう。

これからも毎年、あの場所に行けることを願って。

エレファントカシマシ日比谷野外音楽堂 10月25日セットリスト

01 奴隷天国

02 俺の道

03 達者であれよ

04 石橋たたいて八十年

05 暮れゆく夕べの空

06 悲しみの果て

07 おかみさん

08 凡人 -散歩き-

09 やさしさ

10 土手

11 珍奇男

12 生命賛歌

13 曙光

14 季節はずれの男

15 ジョニーの彷徨

16 人生の午後に

17 シグナル

18 晩秋の一夜

19 翳りゆく部屋

20 OH YEAH!!(ココロに花を)

21 ハナウタ~遠い昔からの物語~

22 FLYER

23 コール アンド レスポンス

24 ゴクロウサン

25 ファイティングマン

アンコール

26 あの風のように

27 友達がいるのさ

28 デーデ

29 笑顔の未来へ

30 俺たちの明日

31 Sky is blue

32 花男

アンコール2

33 ガストロンジャー