エレファントカシマシ"悪魔のささやき~そして、心に火を灯す旅~"@名古屋市公会堂 レポート

自分の好きな何かをひとに薦めるときに、これいいんだよ最高なんだよ絶対気に入るよこれ好きじゃなきゃ人間じゃないよみたいな、押して押して押しまくることをするのがあまり好きではないし、得意でもない。

けど。

それでもそういう衝動に駆られるときというのはどうしてもあって、この日のエレカシのライブもまさに「そういう衝動」に突き動かされるような1本だった。はああああ。なんだったのか。あれはなんだったのか。幸運にもとても近いところでライブを見ることができた、というのもあるのかもしれないけれど、それにしても圧倒された、気圧された。

 

moonlight magicで幕開け。今回のツアーは浜松の窓枠とここの2本だけど、ほんとに宮本先生の声がすごくよく出てる。2曲目のゴッドファーザー、これ絶対音源よりライブで聴く方がかっこいいよね…まあそういう曲はもちろんたくさんあるわけですが、good morningは特にそう思う曲が多い気がする。

悲しみの果て、彼女は買い物の帰り道あたりから、1曲ずつ曲前にどういう曲か、っていうのをコメントする宮本独特のMCが続いたんだけど、中盤以降はまったくといっていいほどMCがなかったです。唯一珍奇の前だったかな、客席から(翌12日が宮本の誕生日なので)「お誕生日おめでとー」という声がかすかにかかって、最初反応しなかったんだけど、ギター持って前向いたときに「もうおじさんだから、誕生日めでたくないけどありがとう」って返して、さらに「45です」ってちょっとはにかんで付け加えたんでした。その顔がねえ、顔がねえ、はあああもうかわいいのかわいくないのってかわいいんだよ!(突然の逆ギレ禁止)でもたぶん、それで客席が、「あっおめでとーって言っても大丈夫なんだ」と思ったんでしょう、そこからはわりと頻繁におめでとうコールがかかってました。いやまあね、わかるよ…だって下手なこと言って一蹴されるおそれもあったわけだしね…一蹴されるならまだしも宮本の機嫌が悪くなるかもとかね…考えちゃうよねきっと。しかし機嫌がいいか悪いかを心配されるアーティストどうなんでしょうか。普通に考えてこれ宮本じゃなかったらわたし一刀両断するところですけど、いやいや宮本のはそういうんじゃないんだよ!と説明してしまいたくなるこれなんてファン心理。

歩く男、今日は蔦谷さんがサポートで入ってくださっていたので、後半蔦谷さんのコーラスとの掛け合いになるんですが、春の夕暮れ、夏の夕暮れ、駅前の道、って続くあの歌詞がまるで即興のように(もしかしたら即興だった部分もあるのかも)聞こえて、そこからまた冒頭に戻っていくあの感じ、新しいアルバムの曲なんだけど、すでに圧倒的なアンセムになりつつあるよなあなんてことを実感しました。この曲のときだっけな、宮本が蔦谷さん、成ちゃん、トミ、石くん、ヒラマさんと一人ずつと向かい合って掛け合いがあって、とくにトミとそういうことをするのがもしかして初めて見たんじゃないかぐらい新鮮だった。

そういえばこの日は「九月の雨」もやったので最新アルバムの曲は全部やったことになるんだな。けど、窓枠で見たときも思ったけど、新旧曲のバランスがなんか絶妙なんですよね。新しい曲、もしくはライブでお馴染みのスタンダードナンバーと、わーこれが聴けるなんて、というレアな曲とのバランスがすばらしいですよね。しかも、いつも思うことですがほんっとにエレカシのライブは一度たりとも同じセットリストということがないのではないでしょうか、同じツアーであっても。この日はなんと(エレカシDBさんによれば)約10年ぶりに登場したI am happyが!宮本が「激シブの曲見つけてきたぞー」つって始まったとき最初何の曲かわかりませんでした(笑)というか途中でも「たしかgood morningに入ってるやつだよなあ」ぐらいまでしか思い出せなかったんですけど、曲が終わった後宮本が曲名を言ってくれて、さらに「CDだとほぼ何言ってるかわからない」「でも10回ぐらい連続で聞いたら突然味が出てきます」みたいなことを言うので笑ってしまいました。いやでもほんと…格好良かったよー、宮本ってやっぱすごいメロディメーカーだなって改めて思いました。

この間の仙台rensaでの公演がustで生中継されて、遠征先のホテルでがっつり見ていたわけですが、あの時の珍奇男がそれはそれは凄まじくて、そんで名古屋でもまた凄まじかったんですよねえ…なんなんだろうあれ。そしていつ見ても丹下さんの仕事師ぶりに惚れますねほんとに。

それで、間のMCもなく次の曲に入って、いきなり宮本のボーカルからで、それが「夢から醒めし人よ 生まれたばかりの人」って始まったのでぎえええええええってなった。漂う人の性!!!うっそーー!大好きで大好きで大好きで、好きすぎてひとにプレゼントしたこともある(itunesでだけど)ぐらいで、でも去年の年末のZEPPツアーのときに名古屋と福岡でだけ演奏されて、それが実にもう7年ぶりぐらいだったのだ。ああ、これでもしばらく披露される機会はないんじゃないか、と名古屋のZEPPに行けなかった私は落胆したんですけど、まさかまさかの!うれしい、うれしい、ありがとう宮本!最後の台詞と、演奏が止まってからの宮本のスキャットの美しさに一瞬幸福で気が遠くなりかけましたマジで!

レポのたびに毎回絶賛しているような気もするんだけど、アルバムの中で唯一弾き語り、として演奏される「夜の道」。私がエレカシのワンマンをごりごり薦めたくなってしまうのはやっぱりこういう曲におけるパフォーマンスの圧倒的さっていうのはフェスではぜったい味わえない、とびきりの瞬間だと思うからです。ロックバンドのライブに来ているとはとても思えない時間を持つことができる、これが贅沢でなくてなんなのか。

しかしこの日の白眉は本当の最後の最後に待っていたのだった。悪魔メフィスト。武道館でも浜松でも聴いたけれど、この1曲だけならこの日のメフィストが最高だった、いや最高とかいうんじゃない、凄まじかった。わたしゃ曲の間中ひたすらぽかんと口を開けて棒立ちだった。なんなんだあれは。あの咆哮、目力、集中力、マイクスタンドの位置が下がってしまっても、それを直そうともせずマイクの上から覆い被さるようにして宮本は歌っていた。歌っていたのか?いやもうよくわからない。

そんなものを見せられたあとだからか、宮本たちが退場してもひといきつく気にもなれず、立ったまま熱に浮かされたみたいにアンコールの手拍子を送ってました。あ、そうだ書き忘れてたけど今日の先生は白シャツにジャケットで登場、3曲目ぐらいでそれをなんというか、すごく雑に脱ぎ捨てたのがめちゃくちゃえろかったですってこれどうでもいいですかそうですか。そしてアンコールも白シャツでした。もちろん着替えてらっしゃったですけど。最初に着てたシャツはもう汗でぐっしょぐっしょでしたのでそれがまたえろかったんですけどねデヘヘこれもどうでもいいですかすいません

そしてアンコール、なんといっぱつめにココロのままに!初めて聴く!なんか今日はがっつりした曲でおしていく感じのアンコールだったなあ。そのあとシャララ、そして極楽大将生活賛歌と、エピック時代の名曲が立て続け。そういえば、ライブの最初の方で今日の会場の名古屋市公会堂のことにふれて、すごく久しぶり、エピック時代にはいっぱいやってたんですよ、全然変わらなくてうれしい、野音と同じぐらい変わらない空気があってうれしい、って言ってました。ほんと、名古屋市公会堂初めてきたけど、どこかレトロというか、時代を感じさせる建物で、エレカシにぴったりだと思っていたので、この言葉は嬉しかった。

本編最後のファイティングマンで宮本が、マイクのシールドを持ったままぐるっと後ろに(蔦谷さんの後ろをも回り込んで)行って、そのままドラムを叩いているトミの肩につかまって台にのぼり、わーーっと手を振っていたのがすげえキュートだったんですが、その(無理矢理伸ばした)シールドを蔦谷さんや機材にひっかからないように持ち上げてサポートしてた丹下さんの仕事師ぶりにも惚れ惚れしました(笑)

2度目のアンコールを求める手拍子もすごく熱くて、割と間をあけずに宮本は出てきてくれたんだけど、あまり喋るのやめようと思ったんだけど、でも名古屋のみんながこんなに歓迎してくれるから、ずっとツアー回ってきてね、いやこっちの話なんだけど、まあみんな聞いてくれるかなと思って、ってほんともー宮本のこういうところたまんない。たまんない。大事なことなので2回言いました。普通にかんがえて聞かないわけないっていうかみんな聞きたいに決まってる。ツアーは残りJCBホールを残すのみ、久しぶりの名古屋市公会堂でとてもいい夜になったと思います、と。そしてラストは花男とガストロンジャーを畳みかけ。花男嬉しかったなあああ、ほんっとに目の前だった宮本が、あの目!目力!そして最後になってもまったく衰えないどころか、ますます凄みを増すあの声!

エレカシのツアーについてはですね、自分が行ける場所に行ければいいというようなスタンスで、初日、とか、最終日、とかにこだわったことなかったんです私。野音にはできるだけ行きたいなとか、執着といってもそれぐらいで。でも、この日のライブが終わった後、あーあとはJCBホール2daysかあ、と思ったらもう最終日に行きたくて行きたくてみたいな欲望がむくむくと湧き上がってしまったのでした。いや、物理的に無理なんですもう予定入ってしまっているしチケットないし。でもそういうエレカシに対するエゴが一瞬ものすごく強大化したのが自分でも驚きだったというか。それぐらいもってかれたってことでもあるのかもしれません。

宮本を下手から見るような位置にいたんだけど、1曲終わるごとにふーっと大きく息をつくところとか、花男でひきちぎったシャツのボタンが一瞬遅れて飛んでいったとことか、背面のホリゾントライトをバックに”エレファントカシマシs”の面々が浮かび上がるところとか、汗だくの宮本の手とか、やー堪能しました。そしてどんなときでも、宮本の一挙手一投足を見逃すまいとするメンバー、蔦谷さん、ヒラマさんのあの気合い。なんつー真剣勝負。この日もステージの上で宮本が次の曲の指示をし、それを必死に聞き取ろうとする蔦谷さんとか、普通に考えてあまりなさそうなことが繰り広げられ、それにみんな完璧についていっていたわけで、ほんとこの人たちすげえ、と思います。そのすげえ人たちの真ん中に立っている宮本もほんとにすごい。あのステージの上での誠実さにはひたすら胸打たれます。

このツアー、ほんっとにいいツアーだったな。毎回オフィシャルブートレッグで各地の映像がUPされて、それを見るのもほんとに楽しみだった。エレカシのツアーは4/2が初日で、だからもちろん彼らも震災の影響を受けたわけだけど、水戸での公演を予定どおりやってくれたこと、延期となった東北の3公演についても「6月中に行う」というアナウンスを早々に発表していたこと、仙台の会場が変更になって、それによってチケットの代金も変わって、差額を入場時に返却するという手を尽くしてくれたこと、振り替え公演のうち1カ所はおそらくスケジュールが合わなかったためだろう、サポートなしの4人だけのライブになったこと、そういった対処はすべて、エレカシが今年で結成30周年になるという「バンド」だからできたことなんだと改めて思う。私は浜松に行き、名古屋に行き、そしてustで中継された仙台での公演を見たけれど、宮本はただの一度も「こんな時だから」というようなことを言わなかった、それはとても彼ららしいとわたしは思うし、そんな彼らのことが大好きでたまらない。花男の最後で、咲けよ、みんな!と宮本がいってくれた、その一言がなによりもなによりもなによりもココロにふかく届いた、それでもう、ほんとうにじゅうぶんだった。すばらしいツアー、すばらしいコンサートをありがとう、次に会いに行ける日を今は心待ちにしています。