precious

誰かにこんなふうに言ってもらえたらなあって思ってたことを言ってもらえた時って、 どんな気持ちがすると思う?

寒空の中、えいえいと律儀に形だけの大掃除をすませて、午後からJAPANを買いに行ってきました。これは人によって違うだろうと思うんだけど、こういう「ちょっと気合いが必要」なものを読む時ってなんとなく外で読みたいっていうのがあるんですよね。その方が自制が効いて冷静に読めるというか。なので今日も、うろうろと買い物を済ませたあとお気に入りのご飯やさんに行き、そこで読みました。

 

さて、JAPAN23年の歴史で初めて、すでに存在しないバンドが表紙を飾るという今号なわけですが、大上段に構えたような「THE YELLOW MONKEYとは何だったのか」というテイストのものとはちょっと違うかなと個人的には思いました。それがよかった、というひともいるだろうし、食い足りないよというひともいるでしょうね。総括という言葉よりは、同窓会という言葉の方が似合う感じです。それは彼らともっとも古いつきあいである井上さんが記事を担当しているということもあるのかもしれません。

 

しかし、井上さん個人がどうこうというよりもまず、今はもういないバンドのことをこうして大々的に語る、というのが難しいことなんだなあと思いましたし、なによりもJAPANの他の誌面とあまりにも温度差があるんですよね。だってJAPANお得意の「傷ついた過去、闘う現在、そして晴れやかな未来」という物語が出来ないじゃないですか。雑誌によってはそういう回顧録的な温度がしっくりくるものもあると思うんですけど、JAPANはないところからでも「今」を作り出すのがすきなところだからなあ。でもそれにも関わらずこの特集が実現しているのは、編集長2名がミッシェルの特集に回っていることを考えても、井上貴子という編集者の愛情と意地のなせる業なんだろうなあと、そしてそういう偏向は自分は決して嫌いではないのだった。吉井のインタビューで、「ほんとうに観たいか」と切り返す吉井に対し、井上さんが頑なとも思える態度で「観たい」という姿勢を崩そうとしないところ、シンパシーを覚えずにはいられないというか。 吉井がテンヤーワンヤーの話をしているんだけど、ここでしているってことはnew projectはユニットとかじゃないんかーと思い、でも奴さんこの間モバイルで「バンドとかじゃありません!」つってたけど、でもこの記事では「バンドやりたい」つってるしどっちなんだよーとか、もうこのひとのインタビュー読んでそういうことを思うことすらなくなりました(遠い目)でも民生とは一度ほんとになんかやってほしい、吉井ちゃんわたしのちっさな夢も叶えてよ!(←強欲ですまん)

 

これはどのインタビューを読んでもそうだけど、お互いがお互いを思いやる姿勢が常にあって、それは5年前の解散インタビューのときと変わらないなあ、と思ったりしました。エマのインタビューで、ヒーセのことを話してたり、ヒーセはヒーセで心配してたりっていう。あと、昔から垢抜けてなかったから今観てもまったく恥ずかしくない、みたいな話はほんとそうだなあと思います。あの頃からまったく時代にそぐわない格好の人たちだったよね、そしてだからこそ今観てもまったく古くさくない。ヒーセが等身大だったり親しみやすいものが氾濫している中で、ネガティブでもどこかに光があるのがTHE YELLOW MONKEYだった、と言っていて、それはまさに私がTHE YELLOW MONKEYにのめりこんだ大きな理由のひとつだったと思います。

 

3人のインタビューを読み終わって、さてアニーはどんなことを言ってるのかしら、渋谷さんとか妙にアニーに手厳しかったりしたよなあ、と思って読み始めて、まずアニーがすごく饒舌になっている空気があって、それに驚きました。インタビューとかで、断言することを避けるような空気があったひとだったけど、そういう部分がすっかりなくなっていた。イエローモンキーをもう一度やってみたいと思いますか、という他の3人にも言葉は違えど投げかけられている問いにも、おそらくは4人の中でもっとも明確に、「ないって人いるのかな?」と彼は言ったのだった。

 

今はもういないバンドの特集をやってどうするのか、って思わなかったといえば嘘になります。嘘になるし、こうして雑誌ができあがってもやはりその困難さは感じないではいられない。だけど、私はこの特集記事をやってくれたことを心から感謝したい。それはアニーのインタビューで、私がもっとも言って欲しいと思っていたこと、聞きたかった言葉を聞くことができたからだ。外で読む方が自制が効いて冷静に読めるからいい、そう最初に書いたけれど、私の自制心はこの言葉の前ではなんの役にも立たなかった。「だからこれ言っていいのかわかんないけど」、という前置きから始まるその最後の20行あまりの言葉は、私がほんとうにほんとうに言って欲しかった言葉だった。

「もっとだよおまえ、もっと自覚したほうがいい。イエローモンキーの再結成はないにしても、おまえのせいで可能性をゼロにするな」。 汚れた手で触って欲しくないと吉井は言い、異質で孤立していたとエマは言い、色褪せていないとヒーセは言った。皆THE YELLOW MONKEYというものを大事におもってくれている、それが本当に嬉しかったし、もちろん、ファンはファンの文法でしか物事を読むことができない、だからこんなふうに読むのもそれは私の文法にすぎないのかもしれないのだけど、それがずっと変わっていないということが感じられたこと、そしてなによりもアニーの言葉が私には本当に嬉しかった。ほんとうに、なによりも。

 

4人のインタビューに加えて、ロンドンアストリアでのライブ写真をはじめとする「HEAVEN」からの写真、過去のJAPANからのショット、井上貴子さんによる総括、全アルバムレビューなど、ほんとうにロッキンオンという会社はどうかしているとしか思えない誌面展開、いやもう足を向けて寝れません(寝てるけど)。編集後記で井上さんははじめてTHE YELLOW MONKEYがJAPANの表紙を飾った号に触れ、「やってよかったといまだに思える一冊」としめくくっている。今回の表紙で、THE YELLOW MONKEYがJAPANの表紙になったのは10冊目になるが、それが実現したのも、まだ海のものとも山のものともしれなかった頃の彼らを表紙に掲げた、その頃からの歴史があってのものだろうとおもう。

 

本屋で平積みにされた雑誌の表紙に4人がいる、っていうことに、なんだかタイムマシンに乗ったような気持ちにもなり、寂しくもあり、うへえ今見てもやっぱりかっこいい、とお医者様でも草津の湯でも、というような気持ちにもなり、ともかくあんまり傷つかないですみますように・・・なんて心配事もちょっとはしながらレジに向かった。傷つくどころじゃなかったね。だって、こんなふうに言ってもらえたらなあって思ってたことを言ってもらえたんだものね。

 

どんな気持ちがするかって? それは読んでみたらわかるよ、きっと。