THE YELLOW MONKEYライヴ映像・独断と偏見でしか選んでないエポック10【後編】

では後編5曲です!前編はこちら!
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フリージアの少年/「メカラ ウロコ・7」収録

この企画やるにあたって、当然まず10曲候補を絞るところから始めたんですけど、9曲までは何の迷いもなくスパッと決まったんですよ。でも残り1曲が決まらない。帯に短し襷に長しじゃないけど、これを入れるならこっちはどうなの?あれは?となってしまい、つまり同率10位がむちゃくちゃたくさんいる状況。それで再集結初日のプライマル。(9999の先着特典)とか、RED TAPEの人生の終わりとか、メカラ9のメリクリとか、いくつかの候補を順繰りに見ていって(そんなことしてるから時間がかかるんだよ)、見始めた瞬間に「これだな」となったのがこの曲です。だからこれはその日の気分で変わるのかもしれないね。

メカラ7のVHSは発売されたのが実際の時系列よりも遅くて、RED TAPEの方が先にリリースされてるんですよね。でもずっとメカラ7を出してくれって要望はめちゃくちゃあったんだと思います。98年10月のリリースですから、つまりパンチドランカーツアーの真っ最中ですから、そりゃもう飢えに飢えたファンにとってこれ以上のご馳走があろうかという。

吉井和哉のドラマティックなところ、シアトリカルなところがここまで形となって現れている映像もなかなかないと思います。またこのカメラワークがそれを後押ししている。乱れた前髪の隙間から吉井の左目だけがのぞくショットとか、執拗に画面の半分に吉井を見切らせ、片目だけを追うカメラワークも勿論なんですが、特筆すべきはあのアウトロで、マイクから遠ざかり歌い続ける吉井和哉を捕らえ続けるところ。音としては歌っていないわけだから、エマやヒーセにカメラを振りたくなりそうなものですが、ここは吉井和哉を追わないとわからないドラマがこの楽曲にあるわけで、いやもうさすがですわー!と大の字になって天を仰ぐ心境です。

私は自分がもともと演劇好き、シアトリカルな演出大好物人間なので、はじめてこの映像を見た時、大袈裟でなく画面に吸い込まれるかと思いましたし、はちゃめちゃな興奮とこうしたドラマが共存しているパフォーマンスに、まじで一生ついていきます…!と心に誓ったことを思い出します。

天国旅行/「『9999+1』-GRATEFUL SPOONFUL EDITION-Disc2」収録

ニューアルバム「9999」を引っ提げたツアー、GRATEFUL SPOONFULの4種類の公演から、ダイヤマークの最終日宮城公演を収録した特典ディスク。なんで数ある天国旅行の名パフォーマンスの中からこの盤をチョイスしたかというと、そりゃ吉井和哉が泣いてるからですよ!わあ!なんてゲスい理由!

ツアーの宿命というか、ファンって往々にして「違った探し」をしてしまうところがあると思うし、まあそんなことをしてもなんにもいいことねえよとしか言えないんだけど、なんかこう、アーティストにとっても特別な瞬間を分かち合いたいみたいな欲がね、抜きがたくある。でもって、このアーティスト側のエモさをはかる物差しに「涙」を持ってくる一派ってぜったいいるじゃないですか。アーティストによっては、本当にはっきり落涙する、しゃくりあげる、声が詰まって歌えなくなる…みたいなひとももちろんいますが、吉井は(彼の内心はもちろん知りようもないが)そういうエモさを律するのに非常に長けていて、エモに浸りきらない、みたいなところがあると思うんですよね。

で、私は吉井のそういうところがむちゃくちゃ好きなんだけど、でもこの天国旅行はなんつーか、あっ、このひと、こんな顔して泣くんだ…という新鮮な驚きがあった。もちろん、びえーんと泣いてるわけじゃないが(そりゃそうだよ)、見ていると「泣いてる」としか言いようがないし、ご本人もそれを自認してらっさる。私の学生時代からの友人で、異性のタイプを聞かれた時に「泣き顔が想像できる男」と答える猛者がいるんですが、一瞬彼女の言うことがわかる…!と思ってしまうほどに性癖のどっかに刺さるやつです、これは。しかもね、それをこうして「盤に残していい」と思えているのがまた、すごくいいことだと思うんですよね。

それにしても、この楽曲をやっているときの4人の没入感というか、吉井だけじゃなくバンドにとって、この曲をものすことが出来た、というのが途轍もなく大きな財産になってるんだなということに感じ入ってしまいますね。エマも、天国旅行がセットリストに入っているときはそこを核にしてた、って言ってましたもんね。リリースから時を経ても、この曲をやっているときの誇り高さは昔とちっとも変わらないなと思います。

甘い経験/「PUNCH DRUNKARD TOUR 1998/99 FINAL 3.10 横浜アリーナ」収録

例によってこれを書くにあたり律儀に当該楽曲を見返しているんですけど、なんでこれを選ぶかっていうと、パフォーマンスとしてのクオリティとかそういうのじゃなくて、スタッフがステージに出てきて踊るっていうスペシャルな演出があるからでもなくて、ひとえにこの「おれと同じ踊りを踊れ」と言われてきた長いツアーの、鍛え上げられたオーディエンスのぶち上がるさまを観るのが好きだから、それに尽きます。

今日はスタッフが全員で踊るぜ、と吉井が言って、そのスタッフの阿鼻叫喚を観るのももちろん楽しいですが、あの間奏に入った瞬間のうねる客席、あの中の何割かはもうステージすら見ていないと思う。あの光景を見るたびに、のちのちに内外から色んなことを言われ、鬼っ子のような(言いすぎ)パンチドランカーのツアーが、でも最高に楽しい瞬間があったし、私たちは全力でそれを享受していたんだってことを思い出させてくれるような気がします。

本当に、「鍛え上げられた」っていうのは誇張でもなんでもなくて、オープニングSEの「オマル」が流れてきたらみんな歓声よりも何よりも先に上着脱いで準備運動始めかねない、そんな雰囲気があの頃の客席にはありました。この映像にはその頃の「楽しさ」を凝縮した一瞬が閉じ込められているようで、私にとっては忘れがたい一曲です。

悲しきASIAN BOY/「RED TAPE "NAKED" ARENA TOUR ’97 “FIX THE SICKS” at 横浜アリーナ」収録

単体RED TAPEには収録されていなくて、FIXツアーの横アリ最終日をまるっと収録したNAKEDの映像です。WOWOWで生中継もされていて、その録画したやつを大事に大事に、VHSからDVDに焼き直して大事に大事にしてました。大好きなライヴ。

ASIANなのに武道館の映像じゃないの?というツッコミがあるのかないのかわかりませんが、そう、そのツッコミは正しい。ASIANといえば武道館ですよね。私もバンドが解散して以降は、このASIANをまたあの4人で、武道館で聴ける日がきたら、そういう夢にとりつかれてましたもんね。そんな妄執を差し引いてもこの横アリのASIANを選んでいるのにはもちろんいろんな理由がありますが、やはり電飾、特効、そしてなにより最後の「We are №1 Rock’n Roll Band, THE YELLOW MONKEY!」のコール。これらがすべて、最高の条件で揃っているというところが大きいかもしれません。

このFIXのツアーは彼らにとって初めてのアリーナツアーで、最高のアルバムを引っ提げてのツアーでもあって、まさに「向かうところ敵なし」という、バンドの全能感がこれ以上詰め込まれたライヴ映像はちょっと他にはないんじゃないかと思います。今改めて見ても、さすがに自分の原点を確認するというか、いやこれ、好きになるはずだわ…としか思えないショットの連続です。ASIANでのお約束の数々も、ここを標準値として自分に刷り込まれているんだなと。満員の横アリのワイパーも壮観ですし、こののち、彼がここ横浜アリーナを「聖地」と呼ぶ第一歩を感じることができる映像になっていると思います。

吉井和哉はもう、この先ASIANでWe are №1 Rock’n Roll Band, THE YELLOW MONKEY!というコールをすることはないのかもしれませんが、それでも私は心の中でいつもこの言葉を唱えてますし、今でもそのコールに相応しいバンドだと心の底から信じています。

Sweet & Sweet/「TRUE MIND TOUR‘95-’96 FOR SEASON in motion」収録

ベストじゃないですー言うといてなんなんですけど、もしベストの1曲を選べと言われたらこれになるかもしれません。楽曲の半分以上が客席のリアクション、おそらくメンバーが映っている時間がもっとも少ないライヴ映像ではないでしょうか。その昔全曲感想の時にも書きましたね。「曲として好きな楽曲を10曲選べといわれたらSweet & Sweetはその中に入らないかもしれないが、ベストライブ映像を10曲選べといわれたら、間違いなくこのTRUE MINDのSweet & Sweetはランクインする。」いやもうそのまんまだよ!!

最初にこの映像を見たのはTRUE MINDのVHSじゃなくて、たぶんNHKで放送されたTHE YELLOW MONKEYの特集番組(ROCK ON MY MIND)だったんじゃないかと思います。思えばあの番組、当時は盤にすらなってなかったメカラ7のSLEEPLESSを流してくれたりしてレア度この上なかったわけですが、このSweet & Sweetも発売されている映像をまるっとフルで流してくれてましたね。

なんて楽しそうなんだ、このひとたち。初めて見た時そう思ったし、それから20年近い時を経た今見ても同じことを思います。ある事象を表現するときに、事象そのものをとらえるよりも、その周囲を見せることで浮かび上がってくるものって絶対あると思うんですが、この映像はメンバーだけを映していたのでは絶対にわからない、THE YELLOW MONKEYのライヴの本質を期せずして掬い取っていると思うわけです。映る観客の層もバラバラ、ライヴに対するリアクションもバラバラ、拍手もあれば捧げもあればヘドバンもある、みんなが好きなことしかしていない、ただそれだけで繋がっている、最高に興奮する空間。

なかでも、「ギターは君の手を縛り」で差し挟まれる、ほぼ最後列と思しきファンの手が束ねられたアクション越しのステージ、あれは文字通りのベストショットなんじゃないでしょうか。吉井自身が手を縛り、で当て振りをしても、そもそもギターを持っているのでああいう両手を掲げたアクションにはなりようがない。けれど、あれほど最高に絵になる構図はなかなかない。あの一瞬を抜いたカメラも、それを編集したディレクターも、文字通り最高の仕事をしていると思います。ちなみに、TRUE MIND NAKEDは、同じライヴですがカット割りがまったく違っていますので、この神編集を見たい方は単体DVDか黒箱をぜひゲットしてください。



以上、独断と偏見で選んだ好きなライヴ映像10曲でした!もともと彼らのライヴ映像を見るのが三度の飯より好きというたちなので、ここにあげた10本はそもそも思い入れがハンパじゃないし、書いてるうちにどんどんどんどん長くなるいつもの病が炸裂してしまいましたね。てへ。こうしたエントリを書くときは必ず原典(DVD)をおさらいすることにしているので、中には「久しぶりに見たぜ~!」というものもありましたが、久しぶりに見てもまったく記憶が薄れていないことを実感しました。こんなんだったっけ?って全然ならない。そうそう、これこれ、これだよこれ!!の連続。いやー楽しかったな!長々しいエントリにお付き合いくださり感謝!どうもありがとうございました!