明日を持ってる

音楽と人」から出版されたpillows本です。武道館のあとで購入。 メンバーのインタビューと、ゆかりのある人からの談話、という形なんだけど、とても読みやすく、面白かったです。バンドというものは、それがどんなものであれ、必ずそのバンドならではの「物語」があると思いますが、ピロウズの物語もまた凄まじい。 例えば同じ20年選手であるエレファントカシマシにも、いつみても波瀾万丈、というような浮き沈みがあるわけですが、しかしエレカシの場合はメンバー間の宮本への信頼度、という点がブレたことはないわけです、すくなくとも表立ってはね(逆はあったようなところもあるけれど)。しかしピロウズは、まずそこを勝ち得るまでの道のり、というのがあって、そこを乗り越えてきたからこその今の強靱さなのかもしれないなあ、と読みながら思いました。 この本のインタビューの中で、何度も、ピロウズというバンドにとってターニングポイントとなったアルバム「Please,Mr.Lostman」の話が出てきますが、このあいだふとピロウズディスコグラフィーを見ていたら、このアルバムの発売日が1997.1.22だったと知ってああ、そうだったのか、となんとも言えない感覚を味わいました。運命ってほんと不思議だ。 本の中から、印象的だったところ。

 

山中『増子さんはすごく察しのいいひとでね、俺の言われたいことを言ってくれたんだよ。だからほんとは全部嘘で、増子さんは、もしひとりだけ誘われても絶対行かないタイプだよ。そこだけ嘘をついたの。僕のために嘘をついたんだ。今となればよくわかる、それは』

 

山中『今まで思ってたことを全部ぶちまけた。「もう真鍋くんのことも、シンイチロウくんのことも嫌いなので。みんなこと嫌いなんだ。だからもう辞めたいんだよ」って。(中略)だけどシンちゃんは即答で「山中、俺のドラムが嫌いなのか?それとも俺のことが嫌なのか?」って聞くんだ。「ドラムは嫌いじゃない」って言ったら、「じゃあ、諦めきれねえ」って。「バンドなんて何回もやる必要ないんだ。俺のドラムが嫌いなら諦めるけど、人間が嫌いなら諦めれきれない。お前これからまた札幌の仲間とつるんで仲良く遊びの延長でやんのか?そんなのバンドじゃねえぞ」って。』

 

増子『東京から札幌ってすごい近いんだけど、札幌から東京ってほんと遠いんだ』

 

真鍋『だからあいつの喜ぶことだったら俺は何でもやってあげたい。そういうギターを弾いていたいんだよ。変な言い方だけど、あんなに俺が俺がって気持ちの強かった自分を認めさせて、こいつにはかなわない部分がたくさんあるなって認めさせたんだもん。バンドが苦境に陥ったときも、あいつは毅然と旗を振って「こっちに来てくれ」って言ってたから。それは今でも美しく俺の目に焼き付いてんだよなあ』

 

佐藤『これは俺の持論だけど、バンドはやっぱ長くやんなきゃいけない。辞めちゃだめなんだよ。人と人がやるんだからさ、ぶつかって当然じゃない?それを乗り越えられるかどうかだし、そんなの時間が解決してくれるもんだよ。辞めたあと、絶対に後悔する瞬間はあるし、後悔したって遅いんだ。だらだらと、無様でもいいから、少なくとも俺は長くやりたいよ』

 

山中『くじけそうになったバンドは、ちょっとピロウズのことを思い出して欲しい。大丈夫だよ。俺が一回、もうダメだって思った時って、うちのメンバーいい歳だったんだぜ。全然盛り返せるよ。もし盛り返せないとしたら、それは本当に能力がないからだよ。そんときは諦めな。(中略)本当に才能のあるいいバンドなら、事務所とメーカーと時代がついてこなくても、絶対に盛り返せる。俺はそう言えるし、言う権利がある。それはウソじゃない。そしてその能力や才能を信じ切ることだよ。たとえ独りよがりだって思われてもさ。そこは誰より自信あるよ。だって、自分を褒めるのが自分しかいない時代からやってるんだ』