シルクスカーフに帽子のマダム #7

ここに至るまでの流れはほんとにもう言うことなくて、THIS ISからの真珠色、そしてSubjectiveのなんともいえない幸福感、ここで終わっても満足できるんじゃないかとおもうほどなのに宴はまだ終わらない。Subjectiveが終わってまだ暗転のうちからアメリカ合衆国国歌を鼻歌で歌う吉井。最初はくすくすと笑いがこぼれているのに、だんだんと独特の空気が会場を包んでいくのがわかる。そして「ラブソングを聴いてください」。ああ、もう!

もともとTHE YELLOW MONKEYの楽曲の中でも指折りのシアトリカルな空気の漂う楽曲で、ジャガーの世界観の一端を担っているのだからそれはそうだろうと思いますけれども、しかし、このメカラ7のシルクは「黒いドレスの女」ではないだけに、よりいっそう吉井の憑依感が露わで、まるでなにかの独立した一場面でもあるかのようだ。

ことに間奏のあと、「ほんとはいいとこのお嬢さん育ちでさ」からは、マイクが拾う吐息やつぶやくように歌われる歌詞も相俟って、その迫力に気圧されそうになる。「こいつが全部いけないんだよね」と唇に嗤いを湛える吉井のあの壮絶な表情!

間奏のギターを吉井が弾き始めるときに、吉井の背中に照明のハイライトが強く当たって、それが白いシャツに反射してぼうっと浮かび上がって、なんてきれいなんだ、吉井くんまるでこの世のものではないみたいだ、なんて思ったりしました。

ごめん、さよなら、ちがう、さよならのリフレインももちろん大好きなんだけど、さっきまであんなにも縦横無尽で自由奔放だったヒーセとエマが、淡々と、ほんとうに淡々とこの楽曲に「尽くして」いる姿もそれとおなじぐらい大好き。

1曲が1本の短編小説のような重厚感。THE YELLOW MONKEYというバンドのドラマチックさをここまで堪能できる曲もほかにないでしょう。