2011年の音楽

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

年明け恒例の振り返りエントリ。

2010年の参加ライブ本数24本(たぶん)。イベントが3つで計27…ま、だいたいこんなもんなんでしょうね。ここ3年ぐらい芝居もライブもあまり増減ない。二つ合わせると60本超なので、それぐらいが今のペースってことなんでしょうなあ。

一番回数見てるのは言うまでもなく吉井さんで24本のうち吉井のワンマンが10本という有様です。ヒッヒッヒ。いや去年のこの振り返りエントリで「来年は吉井の回数が増える」言うてるからね。イベントもRIJFJ-WAVE、ロックロックとすべからく吉井絡みですしおすし。

次に多いのがエレカシでワンマン4本、その次がスピッツで3本。あとはユニコーンだったり民生だったり魂だったり。

演劇ライターの徳永京子さんが、毎年その年のベスト、というようなものを聞かれるけれど、今年はそのアンケートに一切答えないことにしたという趣旨のテキストをblogにあげていらっしゃって、個人的にその想いにはふかく賛同するものの、しかし私は2011年のベスト作品を選ぶことにそういった心理的な抵抗は薄いなと思ったのも正直な気持ちでした。でも、ことライブについては、ベストの1本というのを選ぶことができない、すくなくとも今年は特にそう思います。そしてそれは徳永さんが書かれているように「3月10日までに観た舞台の「素晴らしかった」と、11日以降に観た舞台の「素晴らしかった」の間にある亀裂を埋めるカギカッコが、まだ私には見つからない」という感覚と近いものがあるような気がします。

その差がどこから生まれてくるのかというのは自分でもよくわかりませんが、おそらくは芝居を観るときは「その世界」に没頭して見ている感覚、一種の遮断装置のようなものがありますが、ライブはやはり自分のその時の心情や環境により大きく左右されて見ている部分が大きいからなのかなあと。

なのでベストというわけではまったくありませんが、そんな中で4月16日に見た浜松窓枠でのエレファントカシマシと、5月21日に見た金沢本多の森ホールでの吉井和哉さんのライブは、2011年という年を振り返ったときに、必ず思い出すライブなんじゃないかなと思います。

エレカシの浜松窓枠でのライブは、私が震災後に初めて見た「ライブ」で、ほんとになんというか、今お前が足元ぐらつかせてどうする!というような状況に自分がいるにもかかわらず、でも正体の見えない不安、というものがまだいろんなところを覆っていた時期だったと思います。

エレカシは4月2日には予定通りツアーをスタートさせ、5日には水戸ライトハウスでライブを行い、東北3公演の振替の日程も早々に発表していました。彼らのフットワークはもちろん「バンド」だからこそというものでもあったし、良い悪いではなく、それがバンドとしてのある種の意思表示でもあったんじゃないかと思います。彼らは言葉では何も言いませんでした。おそらく、直接的にはもっとも何も語らなかったアーティストのひとりなのではないでしょうか。

小さいライブハウスを埋め尽くす観客と、それに対峙するエレファントカシマシ。へんないい方ですが、あのライブの時ほど、このバンドに背中を押されていると思ったことはなかったし、最後の最後まで、言葉では何も言わず、ただ圧倒的な誠実さをもって音楽を届けていた宮本浩次というひとの佇まいには、陳腐な表現ですが震えるほど感動したことをはっきりと覚えています。何度でも立ち上がれと叫ぶように歌われた瞬間に涙がこぼれたことも。

去年は吉井さんの二つのツアーがあって、計10本も足を運ぶことが出来て、それ自体がそもそもほんとうに恵まれた、幸福なことだったなあと思います。参加したライブの中で、たとえば点数をつけるとすれば国際フォーラムだったり城ホールだったりがあがってくるのかもしれないですが、でも鮮明なのは金沢でのライブなんですよね。

観客の雰囲気がとてもよくて、開演前から待ちかねたぞ、という空気に満たされていたのもその要因かもしれませんが、私が吉井和哉という人のライブで見たいと思っているもの、もっと言えば、ツアーというものの中で見たいと思っているものがあの日のライブにはあった、そう思います。サプライズとか、レア曲とか、そういうことではなくて、ツアーだからこそ果たし得る深度のようなもの。すごくなっている、これからどんどんすごくなるにちがいない、という予感のようなもの。

その直前に個人的にいろいろとあって、遠方まで足を運ぶことを厭わない私が「ライブになんか行ってる場合なのか」という考えが頭を過ぎったりしていたという、きわめて私的な事情ももちろんあると思いますが、それを本当にちらっとでも思い出させなかった。あんなに集中しきってライブを見たのは久しぶりだったんじゃないかとさえ思うほどです。

吉井和哉に父性というものを求めたことなど一度たりともないつもりですが(笑うところ)、この時の吉井さんは本当に頼りがいのある男だったと思いますし、いろんなものを引き受けてここに立っているんだろうなという逞しさのようなものを感じたことを思い出します。

さて、一昨年昨年のこの振り返りエントリを読み返していたら、奇しくもベストMCが両年とも毛皮のマリーズ志磨遼平さんだったんですよね。で、今年も、彼です。最後のツアーには参加していませんし、フェスでほんの短い時間を共有しただけなのにね。でも、あの花火とあの言葉は忘れられない。マリーズというバンドは消えてしまっても。

雨が降っても、雷が鳴っても、バカかわいいおまえたちを、

いいかい、雨が降っても、雷が鳴っても、

地震が起きても。

目に見えない何かが降ってきても。

僕は死ぬまで、きみを離したりしないぜ。