そして夜はすべて この手の中

5月21日はTHE YELLOW MONKEYのメジャーデビュー記念日。

20周年おめでとう。

20年、というとそれなりの長さに思えるけれど

実際のところ結成から数えても約11年、

メジャーデビューからは約8年半で

彼らはその活動を休止している

私自身がまさに青春、ともいうべき熱と濃度で

彼らの背中を追いかけたのは

そのうちのたった4年にすぎない

15年前、蟻地獄に足を踏み入れてしまったときの

さまざまなことを思い出す

研修先で買い出しに出かけたイトーヨーカドーで流れていたSPARKのこと

POP JAMのエンディングで流れていた曲のこと

ダ・ヴィンチの読者投稿欄で取り上げられていた歌詞のこと

近所のダイエーの2階にある

演歌以外は売れ筋のJ-POPがおざなりにおかれているだけのCDショップで

TRIAD YEARSがかかっていたこと

何気なく曲名を尋ねた店員さんが

やけにはっきりと

空の青と本当の気持ちです

と答えたこと

すべてがドミノ倒しのように起こって

私を蟻地獄の中に引きずり込んでいった

まるで運命のように

活動休止から11年

解散から8年近くが経って

諦めの悪い私もさすがに

気持ちの整理というやつがすこしはできたと思う

すくなくとも

解散の一報を知らされたあの夏の日から続いた

地中に沈み込んでいくかのような重たい感覚は

今の私にはもうない

ロックバンドとそのファンというものは

「解散」という事態に向かい合ったあとに

多かれ少なかれ

「再結成」という物語に振り回される

実際にする、しないに関わらず

そしてその是々非々が

いつだってつきまとってしまうのだ

彼らの再結成を望む人がいる一方で

それをよしとしない人がいるのもまた事実

どんな形ならいいのか

どんな形なら受け入れられないのか

それはきっと人の数だけ思いというものがあるのだろう

では私はどうなんだ

と自分に向かって問いかけてみる

正直なところ

今の4人がこのバンド名を纏って

ステージに立っている姿を

私はうまく想像することができない

けれど

そういった自分の思念や雑念を

極限まで取り払うと

最後に残るのは

もういちど

というたった五文字の言葉のような気がする

もういちど

もういちど会いたい

彼らに。

結局のところ

私は彼らの再結成を望んでいるのではなく

彼らの再演を

望んでいるにすぎないのではないかと思うことがある

そしてそう思うたびに

自分に失望にも似た気持ちを抱いてしまう

THE YELLOW MONKEYはかっこいいバンドだった

何よりも彼らのかっこよさこそを私は愛したと言っていい

それなのに

彼らから「かっこよさ」を奪うかもしれないことを

なぜ私は望まないではいられないのか

イギリスの小説家W・W・ジェイコブズの書いた有名な短編小説「猿の手」は

持ち主の願い事を3つ叶えてくれるという猿の手を巡る物語だが

それを手にした家族はわずかなお金のために

ひとり息子を亡くしてしまう

息子への愛情に溢れた愚かな彼の母親は

息子を生き返らせてくれとふたつめの願いをかける

それがどんなものを呼び起こすかも知らずに

私も同じなのかもしれない

愛情ゆえに盲目になって

何も見えていないのかもしれない

そして結局は猿の手でその三つ目の願い事を口にする父親と

同じ道をたどるのかもしれない

けれど

たった4年の間だったが

彼らのくれたたくさんの希望と絶望と興奮は

これだけの時間が経っても

わたしにそれでも、と言わせるのだ

それでも、もういちど、と

THE YELLOW MONKEY

20回目のメジャーデビュー記念日

おめでとう

魔法の解き方を未だに見つけることができない

愚かで小さなひとりのファンより