今年の終わり

お気づきの方がいるかどうかわからないが、私は自分の好きなTHE YELLOW MONKEYというバンドのことを、四文字の略称で呼ぶことができない。

呼ばない、というよりこれはもうむしろ呼べない、というのが正しい。昔友人と「催眠術って本当にあるのか」みたいな話をしたことがあるが、あのテレビでよくやる(って、実際見たことないけど)自分が犬だとか鶏だとか思い込むとかいうあれはどうも俄かには信じがたい。でももしかして私があの四文字の略称を使うことができないのも一種の催眠というか暗示なのではあるまいかと。意識して「使わない」と思っているとふとした拍子に使ってしまうかもしれないが、なにしろ暗示にかかっているのだからして、どうにもこうにもいけません。

ってここまで書いてもその名前を出せないところからもお分かりのように、書くこともできないんですね実は。

「イ・・・・イ・・・イエ・・・・言え(書け)ない!」みたいな。もうなんだかちょっとしたSMプレイの様相すら呈して来ているのであって、SMといえば関係ないが最近よく来る迷惑メールの中に「割り切ったSFを希望します♪」みたいな文面があって

それを言うならSMだろおおお!!!!

と思わず迷惑メールにツッこんでしまった私だ。割り切ったSFって、どんな作風だよ。

何の話だ。

おそらくそんな風に呼ばれることを、メンバーが快く思っていないという話や、昔はどこのファンサイトでもあった「略称で呼ぶか呼ばないか」みたいな騒動を見ているうちに刷り込まれたのだとは思う。ちなみに、これはだからほかの人にも使ってほしくないということでは全然、全然、ないんです!このネタを(ネタ言うな)ずっと書かなかったのも、特に思い入れのない方に気を使わせてしまっては悪いなと思ったので書いていなかっただけなんです。他の人が言ったり書いたりしているのを見てもなんとも思わないのですよ、ただ、自分は使えないというだけで。

略称で呼ぶか呼ばないかの騒動なんて、ファンじゃないひとから見たら馬鹿馬鹿しいの一語ですまされるようなものですが、バンドのファンというのは無闇に熱いもので、まあ何かといえばいろいろやってました。プライベートな話題をするかしないかとかね。THE YELLOW MONKEY公式サイトができた当初も、BBSでこの略称問題で紛糾したんだから、なにをかいわんやである。メンバーが嫌がっているのなら呼ぶべきじゃない、略称も愛情表現のひとつ、メンバーが嫌だからって、じゃああんたメンバーが死ね言うたら死ぬんかい!そんなことは言ってねえ!そんな応酬。まったく無駄に熱かった。

私がネットを始めた当初入り浸っていたantinomie syndromeというサイトのBBSでもそういった話題でレスが進むことがよくありました。ファンが増えてくれば増えてくるほどそういう頻度は高くなりました。あるとき、そのサイトのWEB MASTERである人が、サイトにある文章を載せました。私は今まで、ネットの中で幾多の文章を読んできましたが、その文章以上に感銘を受けたものは、いまだにありません。彼女は、いつだって行き着く先は個人の自由という問題だと、そして自由とは、他人の自由を奪わない前提で存在するものだと、そして自分とは異なった考えを持ったひとを否定することばかりを自分の主張にするな、そう書いていました。

私はここを運営していくにあたって、

マナーだとか、エチケットだとか、ルールだとか、

そういうものはできるだけ持ち出したくない。

それよりも、誇りとか、尊敬とか、信頼とか、感銘とか、

共感とか、感動とか、そういうものに支えていって欲しい。

甘いと言われそうだけど。

この六行の言葉は、私がこのサイトをやっていくうえで、もっとも自分に言い聞かせている言葉です。彼女の考えは果たして甘かったのか、その後そのサイトはなくなりました。しかし私は多くのことを彼女に学びました。ネットの楽しさ怖さ、サイトをやっていく上でルールを課せられるべきなのは訪問者ではなく作り手であるべきなのだということも、ひとつのサイトが生まれ、育ち、膨張しやがては消えるその一部始終も、プラスマイナスあらゆる面で、彼女と彼女の作ったサイトがあったからこそ私は自分のホームページを作ることができたのだと思います。

5年たちました。もうすぐ、少しずつ増えてきたカウンターの数字が200000になります。私の思惑以上に、ルールよりも感銘や共感や感動でこの場を満たしてくださった訪問者の皆様に感謝の言葉を。私が四文字の略称で呼べないバンドは消えてしまいましたが、それでも人生は続き、このホームページも細々とながらも続けていくことができそうです。

2004年の年の瀬、いかがお過ごしですか。

どうか来年が皆々様にとって、楽しくすばらしい1年でありますように。

2004.12.31