音楽と人 2006年11月号

音楽と人 2006年 11月号 [雑誌] 音楽と人 2006年 11月号 [雑誌]

各雑誌が判で押したように黒スーツにシンプルなバック、というショットで来るなか、さすがは音人である。さすがとしか言いようがない。寺て!女郎が眠る墓場に連れていく雑誌はやることが違うよ!(笑)

インタビューの内容も、雑誌ラッシュの中で出たものとしては一番毛色が変わってるなという感じ。基本的には「如何にトンネルを抜け出したか」の話が主であって、アルバムの話は、実はあんまりしていないところもまた、音人の愛しい部分である。

インタビュアーの人が「吉井さんは年齢を気にしすぎ」という事を言うのだが、実は私もそれはそう思っていた。というか、大雑把に人間を「年齢を気にする人」「しない人」にわけると、吉井は前者で、私は多分後者だ。もちろん、全く気にしないわけじゃないよ!だけど、例えば1対1で人と向き合うときに、その人の性別を気にする人としない人、年収を気にする人としない人、容姿を気にする人としない人、それぞれいるわけでしょ?私は、相手がいくつかということを全くと言っていいほど気にしないたちなんです。(異性として付き合うのに)年上と年下どっちが好き?という質問も、もう本当にどっちでもいい、と思う。でも吉井は本当に年齢にこだわるし、それが彼のパーソナリティを形作っているかなり大きな部分だとは思います。しかし、吉井に向かってそういった人は今までちょっと記憶にないので、新鮮な感じだった。

ものっすごい唄いながら会場を支配している、って感じたことがあったの、イエローモンキーの全盛期に。だとえば武道館だとか横アリだとか、ほんとに会場の角のところまで指が入ってグゥーッ!って全部つかんでいるような。<もう絶対うごかさん、お前たち!>みたいな、そういう支配力があったことがあって、今そういう感じですけどね、気持ち的に。

以下ちょっと独り言なので畳んでみます。

吉井の言うこととはある意味全く関係のないことだが、こういう経験は舞台でもあります。役者さんで「最後列のお客さんまでがっちり気持ちを掴む自信ありますよ」と語った人が居ますが、「観客がひとつになる」という陳腐な言い回しなんかよりももっともっと強力に、舞台の役者の息づかいまでもが(どんなに離れた席であっても)感じることが出来る瞬間というのは本当に存在するんです。一緒に息を吸い、吐き、感情を共有していると感じる瞬間。それはとてつもない幸福な瞬間です。 そういう瞬間は、そしてめったに体験できるものではなくて、同じ役者が同じようにセリフを言っても、届かない時は全然届かないし、それこそが「LIVE」というものの面白さだと私は思います。

舞台やライブは同じものは二度とない、とお題目のように唱えられているけれども、それはセットリストの違いや日ネタのアドリブの違いでは断じてないはずで、毎日毎日同じ頂点を目指していても、到達できなかったり、思わぬ頂上に着いたり、もっと高みを見ることが出来たり、そういったものが「日々違う」ことの醍醐味に、ライブだからこその面白みに他ならないんじゃないでしょうか。

人とどれだけ違う体験を出来るか、に血道を上げがちな私自身への自戒の念もこめて、今度のツアーでは、一回一回のライブならではのものを、ちゃんとフラットに受け止めてみたいものだよ、と思います。